汚染水海洋放出への抗議メッセージ

SNBもメンバーになっている在外邦人の脱原発ネットワーク「よそものネット」で、現在日本政府が計画している放射能汚染水海洋放出に対する抗議声明を日・英・独・仏4か国語で発信しましたhttps://yosomono-net.jimdofree.com/

フクシマ原発事故/日本:放射能汚染水を海へ放出?

日本は、福島第一原発事故から出る、フィルター処理後もまだ放射能汚染されている水を希釈して2023年の夏にも海へ放出しようとしています。

「フクシマ原発事故」とは?

2011年3月11日の大地震と津波の発生後、福島第一原発で水素爆発と炉心溶融を伴う深刻な原子力事故が起こりました。これにより大量の放射性物質が環境に放出され、大気、土壌、水、食物を海陸で汚染し、それが今も続いています。

12年以上経った今も、当時発令された原子力緊急事態宣言は出されたままで、2万人以上の人が公に避難者として登録されています。子ども、若者、妊婦を含む近隣の住民たちには年間20ミリシーベルトという被ばく限度線量が強いられていますが、これは法律で民間人に許されている最大被ばく線量の20倍で、原発労働者の基準値と同じです。

なにを海に放出?

事故を起こした原子炉は、冷却回路が壊れていてもずっと水で冷却する必要があるため、強度に汚染した冷却水がどんどん溜まり、それが漏れ出てくる地下水と雨水と混ざって日々大量の汚染水に膨れ上がっています。今では130万トンもの量となって約千基ものタンクで福一の敷地で保管されています。この水を日本はフィルター設備で処理し、希釈してから海に放出しようとしています。

日本政府の言い分

放射性核種の含まれた水はALPSというフィルター設備で「問題のないレベル」まで処理される。残るのは主に水から分離が難しいトリチウムだけである。トリチウム水は世界のどの原発からも放出されている。水に含まれている放射性核種はすべてそれぞれの濃度限度を下回るまで処理され、さらに放出前に希釈される。国際原子力機関IAEAからも承認を得た。東電によればタンクを置く場所がもうすぐなくなる、こう主張しています。

問題点

福島第一に保管されている水は、溶けた燃料棒に触れた液体の放射性廃棄物であり、通常の原子炉の運転で放出されるトリチウム水とは比べることはできません。ALPSは放射性核種すべてを取り除けるわけではありません。水素の同位元素であるトリチウムだけが処理後に残る唯一の核種かのように言われていますが、実際にはトリチウムのほか、セシウム134および137、ストロンチウム90、コバルト60、炭素14、ヨウ素129などが含まれています。

生態系および食物連鎖におけるトリチウムの影響はしかし、調査が不十分なほか、わずかな調査結果も考慮されていません。どの量からは何が「問題ない」と、誰が判断するのでしょうか? 放射性物質の環境への放出に関し、日本政府はそれぞれの核種に対する告示濃度限度を定めました。これは、人が70年にわたり毎日その濃度の水を2リットル飲み続けた場合、1年間で平均1ミリシーベルト被ばくする、という濃度です。ということは、長期にわたる影響評価はここでは全く考慮されていないことになります。また、個々の放射性核種がどのように海水で変化し、どのように食物連鎖で濃縮され、どのような害を及ぼす可能性があるかについての研究も不十分です。濃度がいくら希釈されても、トリチウムは年間22兆ベクレル/ℓ分が海に放出されることになります。希釈されてもばらまかれても、量に変わりはありません。

トリチウムの半減期:12年、ストロンチウム90:28.8年、炭素14:5730年、ヨウ素129:1570万年。

予防の原則

放射線防護の観点から言えば、福島第一の汚染水は厳重な管理のもと、タンクに保管されたままであるべきです。疑義がある場合には予防の原則に則るべきです!

ことに心配されているのが近隣の港で捕れる魚から検出されるセシウム134/137 が増加している事実です。2023年6月には、クロソイでなんと18,000ベクレル/キロが測定されました。汚染水の漏洩が続いている可能性があります。これを徹底的に調査し対策をとらずに汚染水を海洋放出するなどは無責任です。

「心の除染」と「風評被害」

市民を放射能によるさらなる危険から守る代わりに日本政府は「少しくらいの放射能は大丈夫、それより不安の方が問題だ」というおとぎ話を広めています。その不安克服のため彼らは、厳重な健康調査や放射能汚染の計測ではなく、「心の除染」という大規模な宣伝キャンペーンで、原発推進派の科学者の意見だけを集めた偏った結論を繰り返しています。人々の正当な恐れを「放射能パニック」、経済に害を及ぼす「風評被害」だとしているのです。

原子力推進のためのIAEA

1957年に「原子力の平和利用」というモットーの下原子力エネルギー推進を目的に作られた国際原子力機関の任務は、放射線防護ではありません。それよりどこまで放射線リスクを「軽微であり無視できる」と呼べるかの規定を作っています。IAEAの影響評価報告書には、海の生態系への長期影響は考慮されていません。どうして彼らの報告書が「認可」だと言えるでしょうか?

去るもの日々疎し?

近隣国、南太平洋諸国は当然ながらこの日本の計画に反対しています。国連の専門家も人体の健康と環境に及ぶ可能性のある危険について懸念を表明しています。一度海洋放出を始めてしまえば、将来も汚染水の海洋投棄を許す前例を作ることになります。日本は、すでにあらゆる環境汚染の影響を受けている海、地球のほかのどの海洋とも繋がっている海を30年以上にわたってさらに汚染しようというのです。海は汚染物の廃棄場ではありません。汚染をできるだけ限られた場所に閉じ込める努力をする代わりに、それを散りばめようとするなど、無責任極まりありません。しかし、東電も日本政府も、大量の水タンクなど、事故がもたらした目に見える結果を、汚染水を海に放出することでできるだけ見えなくしてしまおうというのです。決してそれを許してはなりません!

従って以下のことを求めます:

  • フクシマであろうがどこであろうが、放射能汚染された水を海洋放出してはならない!
  • 世界各地の原子力施設に対し、生態系変化と人体への健康への影響をモニタリング・分析する、独立した団体による管理・研究システムの設立
  • 研究・モニタリング結果の透明性高い開示

2023年7月23日付

出典:

http://oshidori-makoken.com/

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/fukushimahyougikai/2021/23/shiryou_04_2.pdf

https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal-de/de04-02.html

https://www.ohchr.org/en/press-releases/2021/04/japan-un-experts-say-deeply-disappointed-decision-discharge-fukushima-water

https://www.iaea.org/sites/default/files/iaea_comprehensive_alps_report.pdf

 

おしどりマコ&ケンZoom講演会 私たちが知っておくべきフクシマの見えにくい事実

 

 

 

 

 

フクシマ原発事故から12

私たちが知っておくべきフクシマの見えにくい事実

毎年恒例、原発事故以来、東電の記者会見に通い取材しつづけるのおしどりマコ&ケンさんのZoom講演会を開催します。

参加には事前登録が必要です。登録先はこちら

開催日時 2023年6月18日(日)

東京 21:00   Berlin/Madrid/Paris 14:00 / London 13:00  Montréal/New York 08:00

2023年3月で12周年を迎えたフクシマ原発事故の影響や現在の状況に関する報告、調査は日々少なくなるだけでなく、覆い隠されどんどん見えなくなっています。その中で汚染水海洋放出、汚染土壌の「再利用」などは市民の理解を得ないまま「粛々と」進められようとしており、透明な調査や話し合いの代わりに「風評被害払拭」対策として広告宣伝に膨大な税金が使われています。

事故以来、東電記者会見に通い続け、作業員や市民と交流し、調査・分析を続けているおしどりマコ・ケンの二人が報告する恒例オンライン講演会「フクシマの見えにくい事実で私たちが知っておくべきこと」、ぜひご参加ください!

プロフィール

マコとケンの夫婦コンビ。 漫才協会/落語協会/保健物理学会会員。 東京電力福島第一原子力発電所事故(東日本大震災)後、  随時行われている東京電力の記者会見、様々な省庁、 地方自治体の会見、議会・検討会・学会・シンホシウム・被害者による各地の裁判を取材。 また現地にも頻繁に足を運び取材し、その模様を様々な媒体で公開している。 2016年「平和・協同シャーナリスト基金」奨励賞受賞。 http://oshidori-makoken.com

 

主催:よそものネット

よそものネットは海外に住む在留邦人による脱原発ネットワークです

リンゲンでの祝脱原発デモ参加報告

2023年4月15日。この日をどんなにたくさんの人たちが待ちわびていたことか。4か月半遅れでドイツの脱原発が実現した。矛盾と噓に満ちた「脱原発」、解決されていない問題が山積みと、手放しに喜べないものだとはいえ、とにかくドイツ国内原子炉の最後の三基が停止されることになったのは、前進だ。ドイツ国内で発電のために核燃料棒が燃やされることはなくなり、そこからはもうこれ以上放射能のゴミは出なくなったのだ。

 

 

4月15日付けのTAZ紙第一面©ゆう

 

 

これまでの経過(事情に通じた方はここを飛ばして読んでください)

本来なら、昨年2022年末でドイツ国内で最後に残ったEmsland、Isar II、Neckarwestheim IIの三基が停止して脱原発を完成するはずだった。それが、ロシアのウクライナ侵攻でロシアに依存していたガス・石油の輸入が途絶え、一挙に「エネルギー危機」が叫ばれることとなった。今の連立政権に加わっているFDPや野党のCDU/CSUは、ドイツの「優秀でまだ十分に安全に使える原発をなぜこのエネルギー危機の最中に停止しなければならないのか、この原発を止めて、その代わりに石炭火力発電を運転期間延長して動かしてさらに二酸化炭素を排出するなどもってのほか」というシナリオで世論を誘導して、それまで反原発派だった多くの人たちも、今脱原発すべきではない、という風潮が高まった。脱原発が党成立以来のレゾンデートルでもあった緑の党のハーベック経済相・副首相はそこで、電気安定供給性について調査し、これら三基を停止しても安定供給は実現できるという判断をした。これらの三基は22年いっぱいで運転停止されることになっていたため、新しい燃料棒は用意されていない(どの燃料棒もそれぞれの原発タイプ、サイズによって特別注文される必要があり、そのウランの注文にもほぼ2年はかかるということだ)し、その他のスペアパーツも欠乏、運転要員も確保されていない。急に運転延長を決めても、どの道残っている燃料棒を長く持たせるために性能レベルを低くして「水増し運転」させる以外にないことは明らかだった。それに、2022年末に停止されることが決まっていたため、本来なら定期検査をされなければいけないのを、去年はしないできた。つまり、運転期間を延長するということになれば、定期検査を行わなければならず、当分運転できないことになるのだ。だから急に去年の秋になってこれらの原発の継続運転が、足りなくなったロシアからのガスや石油に取って代わる「オールマイティソリューション」になれるわけはなかったのに、それをFDPやCDUはそのことを言わずに、あたかもこの原発を延長運転しさえすればエネルギー危機が回避できるかのように声高に宣伝し、脱原発をやめさせようとしたのだ。

ショルツ首相は、連立政府内での諍いを治めるためもあって、妥協して4月15日まで4か月半運転停止を延長するものの、その代わり新しい燃料棒注文はせず、それ以降脱原発の日にちをずらすことはない、と去年の10月23日に宣言した。それ以降もFDPやCDUは何度もエネルギー危機を煽り、ことに緑の党や反原発の人たちは理性からでなくただ「イデオロギーのため」だけに脱原発にこだわっているのだ、というような話をして、世論を扇動した。しかし、メルケルの下で政権に長く就いていたそのCDU/CSUこそ、2011年にフクシマ事故があって脱原発を決定したものの、ついこの間までの16年間、原子力からも二酸化炭素からも脱した本物の再生可能エネルギーによる完全なエネルギーシフトを推し進めてこなかったからこそ、今の化石エネルギー危機があるのだ。現在はまだエネルギーミックスの約半分ちょっとを再生エネルギーが占めているだけだが、本来ならばこの割合がもっと広がっていなければいけなかったはずだ。

ロシアからのガスをことに推進したのはその前のプーチンの盟友シュレーダー(SPD)だったかもしれないが、その方針を変えずにエネルギーにおけるロシア依存を推進してきたのはメルケルだ。ドイツ北部では風力発電が立ち並び、再生可能エネルギーの割合が高くなったのに、それをエネルギー消費の高い南ドイツまで運ぶ送電線も計画通りに建たず、風力発電建設も南ドイツでは遅々として進まなかった。ドイツ国内で北から南へのエネルギー供給がそのためできないだけではない。原発は急激な発電量の調整が難しい発電方法であるため、原発からの発電量が送電キャパシティを占めて「詰まらせて」しまうと、その分再生エネルギーからの電気が受け入れられなくなるということも忘れられがちだ。再生エネルギーは太陽の照り具合、風の吹き具合で発電量が変わるが、そのため調整しやすいガスによる発電が便利で、調整のできない原発は不向きであるのは知られた事実である。

また、電気市場はEUレベルだ。ドイツで作られる電気もEU電気市場で扱われる。隣の核大国フランスでは、去年から原発の故障、弁やパイプなどでひびがいくつも発見されるなどの理由で停止が相続くほか、さらに気候変動で川が枯渇し冷却が不可能となって、フランスの原発のほぼ半分が運転しなかったため、EUの電気市場で電気量が欠乏し、電気の値段が上がった。これはロシアとは無関係だ。フランスはたくさんの原発で発電し、それをスペインやポルトガルなどに輸出していて、それを一定の金額で給電する契約をしているため、急遽足りなくなった電気を高い値段で輸入し、それを契約で決まっている安い値段でスペインなどに送らなければならないという赤字の契約履行を強いられている。EU電気市場ではそこで、ドイツからの電気も少しでも多く欲しい、と言われたのだった。ドイツが残りの三基(しかも残っている燃料棒で発電量を抑えながら水増し発電しての状態で)が供給できる電気量は市場にとっては焼け石に水程度の量だったにもかかわらず、だ。

脱原発?

4月15日という日にちはしかしありがたいことに守られた。今年の私たちのかざぐるまデモでも、4月が近づけば、脱原発をやめさせようとする声がきっとまた高まり、覆されるかもしれないという危惧を何人もの演説者が少なからず示していた。でも、私たちはこの脱原発が、決して一貫性のある本当の脱原発ではないことを知っている。なぜかと言えばドイツでは原子力法が脱原発を定めたにもかかわらず、原発で使用される燃料棒を製造する工場(リンゲン)と、ウラン濃縮工場(グローナウ)も平気で稼働したままであるからだ。それだけではない。あれだけプーチン支配下のロシアを裁くために経済制裁を行うと言いながら、ロシアからのウランはオランダを通ってドイツ国内に運ばれてきているばかりか、フランスに至ってはフランスの原子力企業Framatome(もとAREVA)がロシアのRosatomとジョイントベンチャーを作り、このリンゲンでロシア型原子炉向けの燃料棒を製造する計画まで立てられている。原子力関係に関しては、ロシアは一切経済制裁から除外されているのだ。そして、放射性廃棄物処理問題はまだ一切解決されていない。問題は山積みである。

 

 

燃料棒製造工場の門の表示©ゆう

 

 

そこで、ドイツの脱原発を祝いながらも同時に、一貫性のないドイツの原子力政策、そして時代錯誤で経済性のない原子力にいまだにしがみつきたいフランス・日本を始めとする世界各国のまやかしの「二酸化炭素を排出しないグリーンな」イメージで原発をどうにか推進したい無責任な政策を非難するために、4月15日にはドイツ各地でデモやアクションが行われた。

ことに今回運転停止されることになっているEmsland(リンゲン)、Isar II(バイエルン州)、Neckarwestheim II(バーデン・ビュルテンベルク州)では大きなデモが予定された。私が行ったのは、燃料棒工場があり、Emsland原発があるリンゲンというほぼオランダ国境に近い町(ニーダーザクセン州)で、ここで駅から集合場所である燃料棒工場前までバスがデモ隊用にチャーターされて向かった。皆が集まってからは、工場の入り口前でプラカートを掲げながら記念撮影などを撮って、いくつか演説、その後デモ行進をして今回運転停止されるEmsland原発前まで歩いて、またそこで演説をして、解散となった。

 

 

雨の中のデモ行進©ゆう

 

あいにくドイツは全国的に寒さが続き、しかもリンゲンは小糠雨が降り続いてうらめしかった。雨は予報されていたのでレインコートや雨用の帽子を持って行ったが、それでもかなり濡れそぼった。雨でなければもう少し人も集まったにちがいない。それでもきっと昔から反原発運動を続けてきた闘士に違いないという人たちがたくさんいて、和やかな雰囲気だった。子供連れの人もいたし、私のように遠くから集まった人もいれば、すぐ近くに住んでいるという人たちもいた。「親がすでにチェルノブイリやヴァッカースドルフ再処理工場建設計画反対で闘ってきて、私は二代目、私の娘たちもその精神を受け継いでいる」と話してくれた自転車で参加した男性にも出会った。

この日は約300人がリンゲンのデモには集まった。ちなみにバイエルン州のIsar II停止を祝ってミュンヘンでは約1500人、Neckarswestheimには約500人が集まったという。南ドイツでは少なくとも雨が降らなかったため、人も集まりやすかったのだろう。ベルリンのブランデンブルク門前でもGreenpeaceとGreen Planet Energyが主催して大きな原発の恐竜を倒して太陽の反原発シンボルがVサインをしているポーズで写真が撮られた。

©Christoph Soeder / dpa                                     ベルリン・ブランデンブルク門前のアクション。脱原発を最初に2002年に決めた赤・緑政権で環境相だったTrittin(緑の党)の姿が(その後メルケル率いる政権が脱・脱原発を決定、フクシマで再びそれを覆す)。

リンゲンでのデモでは、ゴアレーベンの市民グループBürger Initiative Umweltschutz Lüchow-Dannenbergの理事・共同代表の一人でもあるElisabeth Hafner-Reckers に再会した。彼女に会ったのは、彼女がかざぐるまデモの演説に来てくれた2017年なので、6年ぶりだ。彼女は、寿都町の町長が最終処分場候補地選定に向けた国の文献調査に応募してからできあがった反対グループ「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」に励ましのメッセージを書いてほしいという私の頼みに二つ返事で承諾し、すぐにすばらしいテキストを送ってくれた(http://kakugomi.no.coocan.jp/pdf/rentai_BILW.pdf)。彼女を始めとするゴアレーベンの人たちの抵抗運動の在り方は、あらゆる人たちに勇気とインスピレーションを与えてきた。彼らは、単に国家権力の方針や決定に抵抗してきただけではない。反暴力であらゆるアイディアを駆使した市民抵抗(日本ではなかなか当たり前の語彙として馴染まないZiviler Ungehorsam市民的不服従)の方法を実行に移してきただけでなく、彼らは「国が私たちに民主主義を実践し、人と自然に優しい国を提供してくれないなら、私たちが代わりにもっといいものを作ろう」というモットーで「Republik Wendland(ヴェントラント共和国)」と名乗って、ゴアレーベン周辺地区を、住みやすく、あらゆる年齢層が一緒に楽しく暮らせるコミューンのような共同体に作り上げてきた。まだ風力発電のない頃から独自で風力発電機を建てる人、バイオガスを作る人、太陽光パネルを自分の土地や屋根に付けて、自分で使い切れない電気を近所と分け合う人がいた。

そのエリザベスに今の心境を聞くとこういう答えが返ってきた。

「やっと最後の3基が運転停止されるのは、とりあえず嬉しい。これでドイツで新たに作られる放射性廃棄物がなくなる。でも、まだその運転停止を取りやめてまた再起動したくてたまらない人たちがこれだけいるから、まだまだ監視の目を緩めるわけにはいかない。私たちのグループは、単に抵抗するだけでなく、どんなに平和に、クリエイティブに、仲良くあるものを分かち合いながら生活していけるか、実践で示してきた。お上が何かを勝手に作り、それがただ与えられる、または買わされる大人しい「消費者」になりきるのではない、どんどん新しいものを買わされ、消費し、そのためのお金を稼ぐことだけで生活がいっぱいになる、そういう図式ではない人間らしい在り方を私たちは求めてきたし、その方がよっぽど楽しいしお互いに優しく助け合いながら生きられる(彼女はFreundlichという言葉をよく使った)。ゴアレーベンには最終処分場候補地のリストからは消されたものの、あいかわらずキャスクが「中間貯蔵所」に置きっぱなしにされていて、それはまったく安全な方法でなど保管されてはいない。これは後に続く世代に残していかなければならない負の遺産だ。親から受け継ぐ遺産が嫌な場合は、子どもは普通はそれを「拒否」することができる。しかし、この放射性廃棄物の遺産の場合、彼らにはそれを拒否することが許されていない。だからこそ、私たちにはそれを少しでも安全に、長期にわたって保管するための方法のコンセプトを国に求めていく義務がある。」

©Lars Klemmer/dpa

「共に勝ち取った!50年間続いた反原発運動」と書かれた横断幕

 

それから、もう一人会うことができて嬉しかったのは、Atommüllreport(放射性廃棄物報告)という放射性廃棄物に関する情報、危険性も含め詳しいデータを集める専門ポータルである団体の代表Ursula Schönberger氏だった。彼女はもともと緑の党で連邦議員にまでなり(1994年~1998年まで)その後別の緑の党連邦議員の科学調査担当を受け持って、そこで2013年にドイツ国内の「核のゴミ」の「在庫調べ」と状況について詳しい報告書(272ページにのぼる)を作成している。それは今でも、ドイツの放射性廃棄物に関する包括的報告書の第一号として連邦議会図書館にも保管されており、それをさらに引き継いでオンラインプラットフォームとして続行してきたのが、彼女のAtommüllreportだ。彼女は2002年にはしかし当時ヨシュカ・フィッシャーが副首相・外務大臣を務めていたSPDとの連立政権で、戦後初めてドイツがNATOの一員としてコソボ紛争に参加すべくドイツ軍隊を派遣し、さらにアフガニスタンでもドイツが戦争加担したことに反対して、脱党している。そういう意味でも、個人的にも価値観が似ていて親近感がもてるのが彼女だ。低・中レベル放射性廃棄物最終処分場になることが決まっているSchacht-Konradの反対グループともずっと活動してきた彼女は、私にこう話してくれた。

「いよいよ脱原発の日を迎えることは嬉しい。これまでの苦労の実が結ばれた。この日のためにずっと長年闘ってきたのだ。もちろん、抱えている問題がこれで小さくなるわけではない。そして脱原発を遂げたことになれば、ドイツでの反原発運動が小さくなる懸念はもちろんある。私たちは、核のゴミの「在庫調べ」をし、何がどのくらい、どこに、どういう風に「保管」(かぎ付きにするのは、まったく信じられない危険そのものという感じの放置状態で放っておかれているドラム缶も多いからだ)されているのかを事細かく調査し、報告してきた。そしてそれをどのようにすればよりこれから何万年、何百万年にわたりそれなりに「安全」に保管していけるか考えていかなければならないが、それを進めるうえでの第一歩は、「これ以上危険なゴミをもう作らない」ということだとずっと訴えてきた。保管方法が定まっていないのに、どんどん次から次へと危険なゴミを作り出すのであっては、議論にならない。とにかくそれが終わるのは正しい方向への第一歩だ」。

 

© Lars Klemmer/dpa                「脱原発というからには燃料棒工場もやめなきゃ」と書かれた横断幕

 

この祝脱原発の国内でのデモ・アクションはことに環境保護団体BUNDとドイツ最大の反原発団体.ausgestrahltが提携してキャンペーンを繰り広げていたが、リンゲンでのイベントでは、私が参加できなかった今年3月11日のかざぐるまデモでも演説をしてくれたBUNDのJuliane Deckel(彼女はもともと日本学を大学で専攻していたということで、デモでも日本語で少し演説していた)と.ausgestrahltのHelge Bauerが二人で一緒に司会をしていた。

ドイツで原発が操業されたのが1961年、それから2023年4月15日に全基が停止されるまで62年間。この「原子力時代」の「恩恵」を得てきたのは多くてもせいぜい3世代だが、そのために排出された解毒できないこの放射能のゴミが危険でなくなるまで、これからさらに33000世代以上がこれとともに生きなければならない、と言われている。そんな無茶が押し通されたのがこの狂気の「原子力時代」だ。未来の世代にとってはまったくいい迷惑だ。

©Hakuba Kuwano

悪天候でもリンゲンでのデモに集まった人たち

デモ解散前の最後のディスカッションには上記のElisabethやUrsula、それにEmsland近郊でチェルノブイリ以降、トーマスのように市民測定所を作って放射能検査をしてきた男性、Schacht Konradの活動家の女性などが司会であるHelgeとJulianeに質問され、それに答える形で参加した。「低・中レベル放射性廃棄物」と名付けることで、あたかも「高レベル」より危険性が少ない、大したことがないような印象を与えているが、それは大きな間違いだ、という話にも、まったくだと私は同感した。放射線は高いから危険、低いからより安全ということはない、定量の被ばくで癌などを発症するのは、「宝くじ」に当たるようなもので、線量が高い低いは「安全性に無関係」で、運のようなものなのだということは放射線テレックスのトーマスも常々言っている。これをここで訴えている人たちは、いわゆる「低・中レベル放射性廃棄物」が保管されている場所のすぐそばに住んでいる人たちで、それらの「廃棄物」がどの程度危険な形で山積みされているか知っているからこそ、その危機感が強い。そして自分たちは「もうすぐ死んでいく運命にあり、これらのゴミが今後どのような形で残されるか、見届けることができない」と思っているということだ。それだけ彼らには焦りもある。どうすればなるべく危険がない形で、コントロールしながら保管ができるのか、そのコンセプトを根本的に考え直す必要がある、ということを皆が語っていた。いわゆる「地層処分」(日本のような火山、地震の多い島国ですら地層処分にこだわっているが)になぜこれだけ固執するのか、という疑問もある。でも、今「仮」に保管されているたくさんの放射性廃棄物(低・中・高レベルの)の貯蔵方法はあまりにお粗末で、いつ「安全な場所に処分されるのか」わからないのに、危険極まりない。飛行機墜落やドローンによる攻撃などがあれば、またはサイバー攻撃などがあればすぐに恐ろしい事態が訪れかねない状態のまま何年も置きっぱなしになっている。

私がしっかり反原発運動にかかわるようになったのはフクシマからで、そういう意味ではここにいたたくさんの「闘志」たちと比べて新米だが、矛盾を抱え問題の多いドイツで、とにかくまがりなりにも最後の原子炉が停止されたこの記念すべき日を、この問題にずっと立ち向かい、ぶれることなく長い息で闘ってきた人たちの話を聞きながら過ごすことができたのは、有意義なことだった。日本のGX束ね法案、札幌で行われるG7環境相会合で日本政府が「汚染土リサイクルや汚染水海洋放出を歓迎する」旨の共同声明を出すべく各国に働きかけた問題、汚染水を何が何でも今年の夏には海洋放出開始する方針など、日本からは原子力関係を挙げただけでも幻滅するようなテーマに尽きないが、とにかく「反原発」運動がドイツでは長く続いて市民権を得、とにかく動いている原発をやめさせることに成功した、というのはポジティブなニュースだ。ドイツが原発による発電をしなくても、ドイツは原発信仰をやめない国々に囲まれている。フランスも、ベルギーもポーランドも、危ない老巧化した原発を何が何でも運転期間延長して動かすつもりだし(日本も同じ)、原子力がなければ気候変動の点からも今のエネルギー危機に立ち向かえない、などとグリーンウォッシングしながら、実は、おんぼろのひびの入った危ない原発を延長して運転する以外に、新しい原発はあまりに建設費用が高くて実現しないし、今動いている世界の原発がどれももう古くなってきていて修理や追加工事が必要であることに変わりはない。フランスのように気候変動で冷却に必要な川の水が枯れてしまえば原発を動かすことはできないし、急にこれから水不足が解決するとは思えない。エネルギー危機を解決するには、「今すぐ」安全に動ける発電方法が必要なのに、いつ建設が完了するかもわからない原発に未来を託すなど、絵に描いた餅で明日からの食事の支度に備えるようなものだ。できるだけ自然に介入しない方法で、環境になるべく優しく、有毒なゴミも、二酸化炭素も排出せず、となれば、再生可能エネルギーでできる限りの電気需要が賄えるようシフトしていく以外ないことは誰の目にも明らかだ。そのために投資をせず、若い世代に恐ろしいほどの負の遺産を押し付け、政治家にたくさんの嘘をつかせ守れない約束をさせながら、いつまでも既存の利益構造にしがみつくロビーの言いなりになっている世界は哀しい。

とにかくドイツでの原発のスイッチは切られた。それを日本にも、フランスにも、イギリスにもポーランドにも、ベルギーにも拡大していかなければならない。やはり市民が動かなければだめだ。気が滅入るニュースに溢れた今、このドイツの祝脱原発デモに参加したことは私にとって、力の与えられる貴重な体験だった。私一人では遠くのリンゲンのデモには参加しなかったと思うが、デモの取材やインタビューの通訳として赤旗の特派員桑野氏に同行させていただき、このデモ参加が実現した。桑野氏に感謝。(ゆう)

©Hakuba Kuwano

ひびが入って絆創膏の貼られたEmsland原発のスイッチを切るアクティビストたち

 

©ゆう

この日の未明まで原発からはまだ煙が出ている

 

福島の証言が海外でコミックに!「Fukushima 3.11」ドイツ語版

 

閲覧はこちらのリンクから↓

Fukushima-3.11_deutsch_web_

 

このコミック「Fukushima 3.11」はフランスの国立科学研究所CNRSのプロジェクトの枠内で行われたインタビューに応じたよこたすぐる氏の証言をもとに出来上がった作品です。フランス在住の杉田くるみさんがインタビューを行いそれをまとめ、漫画家のダミアン・ヴィダル氏が実際の史実に忠実に研究を重ねコミックに仕立て上げました(オリジナルはフランス語で、英訳もあります)。このコミックはまずTOPOという漫画雑誌の2019年1月/2月号に掲載されました。

今回杉田さん、ヴィダルさんの許可と、お二人が所属なさっている「遠くの隣人3.11」のご厚意で、ドイツ語翻訳が完成しました。「遠くの隣人3.11」はフクシマ原発事故以来被害者の方々を支援してきているグループで、このコミックを無料で誰にでも読めるように提供してくださっていますが、著作権はもちろんこのお二人にありますので、このコミックをどこかで紹介・公開・拡散なさる場合には、必ず「遠くの隣人3.11」を通じて著者の方に連絡してくださいますよう、お願いします。

 

『世界のみなさまへ』福島原発告訴団団長・武藤類子さんからのメッセージ

世界の皆さまへ

2022年、私たちはロシア・ウクライナ戦争によって核兵器使用の恐怖と、原発は攻撃されれば核兵器になり得ることを再認識せざるを得ませんでした。8月から岸田政権は、GX基本方針などとしての原発再稼働、新増設、リプレース、運転期間の実質延長などの政策を次々に打ち出し、今年2月10日に閣議決定してしまいました。パブリックコメントは非常に短い期間しか募集せず、国民に対する説明・意見交換会も10カ所だけで、それがまだ終了していないのに強引に原発回帰への道を選んだ政府について、憤りを今まで以上に強く感じています。

福島原発事故は、未だ収束すらしていないし、7つの市町村には帰還困難区域が存在し、数万人の避難者が故郷に帰ることができずにいます。たった12年で事故の反省と教訓として選んだ「原子力の依存を低減する」「原発の運転期間を原則40年とする」「原子力の規制と推進を分ける」という政策を手放し、このような愚かな選択をすることが次の原発事故を準備することになりかねないと不安を感じています。私たちは再度、力をふり絞ってこの暴挙を止めなければなりません。

裁判の状況を見ても同じことが言えるかもしれません。昨年6月の国の責任を認めなかった避難者訴訟最高裁判決は、4つの裁判のうち3つが高裁判決では国の責任を認めていたのに、それを覆しました。今年1月の東電旧経営陣の刑事裁判控訴審は、現場検証も重要な証人尋問も却下しておきながら、「立証が不十分」と言って「無罪判決」とされました。避難住宅の追い出し裁判では、国際人権法からの避難者の住まいの権利という視点での審理がされませんでした。どの判決も十分な審理を行ったとはいえない納得しがたい判決でした。これは原発回帰の方向性と無関係ではないと感じます。東電刑事裁判は最高裁への上告が決まりました。高裁判決の欺瞞を社会に広め、弁論が開かれるように運動を続けたいと思います。

もう一つALPS処理汚染水の海洋放出が、今年の春から夏へと迫っています。一旦海洋に流し始めたら、今後何十年も流すことになります。私たちは昨年、環太平洋に住む人々と一緒に国際フォーラムを持つことができました。汚染水が流される先には、海を生きる場とする人々への人権侵害と、海を住処とする生物への命の侵害があります。これは国際的にもますます大きな問題になるでしょう。事故で既に膨大な放射性物質を流しているのに、国と東電が福島の海から意図的にさらに放射性物質を流すことに、私たちはいたたまれない気持ちになります。何とか止めたいと思っています。私たちは、一昨年政府が海洋放出を閣議決定した4月13日近辺に、世界の各地で海洋放出に反対するスタンディングを行うことを呼びかけています。世界の市民が繋がって、汚染水の海洋放出を止めるアクションを一緒に起こしていきましょう。

今、世界の暗さは一層増しているように感じますが、未来の世代に手渡す世界に、少しでも光が射すように、私たちは決して諦めることなく力を尽くしましょう。

 

2023311日 福島にて

 

武藤類子

福島原発告訴団団長

http://hidanren.blogspot.com

http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.com/p/blog-page_5112.html

 

武藤類子さんのメッセージは毎年複数の言語に翻訳されています。今年は7か国語。詳しくは在外邦人による脱原発ネットワーク「よそものネット」のウェブサイトでご覧いただけます。

https://yosomono-net.jimdofree.com/%E6%AD%A6%E8%97%A4%E9%A1%9E%E5%AD%90%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8-7%E3%82%AB%E5%9B%BD%E8%AA%9E/

 

2023年3月11日かざぐるまデモのお知らせ

福島原発事故12周年・かざぐるまデモ:放射能の危険はごめんだ ‐ 原発からも核爆弾からも

 

ドイツの脱原発が最後の原子炉停止を目の前に延期されることになろうとはだれが想像したでしょうか、それも緑の党が政権に加わっているときに! 原発の運転続行がエネルギー危機の解決とでもあるかのように謳う風潮が急激に広がりました。核保有国・原子力大国であるフランスでは、稼働するはずの原発の半分しか運転できない状態が続き、原子力エネルギーがどんなに信頼できないものであるかを証明しています。この議論では、原発がどのような安全リスクを生みかねないか、なぜフクシマ原発事故後、ドイツで脱原発が決定されたのかが不思議なほどに忘れられています。
2023年4月半ばまで現在残っている原子炉はいわゆる「Streckbetrieb」(使っている燃料棒を能力を押さえながら長持ちさせて延長して使う)で運転されることになっています。推進派は、原子力エネルギーによりエネルギー独立が可能かのように言っていますが、燃料棒を作るためにEUではウランの多くがロシアから輸入されている事実に目を閉じています。原子力ロビーは原子力セクターをEUの制裁から外させることに見事に成功しているのです。

 

ロシアのウクライナ侵攻により核の脅威がいかに現実的なものであるかがはっきりしました。これまで軍縮を支持してきた人たちの多くが突然、核抑止、核の傘下にあることの重要性を謳い始めています。
ウクライナでの戦争でもう一つのことが明らかになりました。それは原発が軍事作戦の攻撃目標になるという事実です。ヨーロッパ最大級のサポリージャ原発は何度も攻撃され、非常用のディーゼルジェネレーターで給電されていることが何度もありました。電気供給が断ち切られるだけで、フクシマのような過酷事故が起き得るのです。
核の連鎖反応や放射線には、味方と敵の間の境界線を見分けることができません。同じ技術が軍事的または「平和」的に利用されようが、区別はありません。安全で気候正義な解決法はただ、できるだけ早く徹底して再生可能エネルギーを世界中で広めていくことだけです。

 

ですから一緒に求めましょう:
• ドイツでこれ以上原発の運転期間を延長しない
• 無責任な原子力エネルギーからの世界規模での撤退
• リンゲンとグローナウの核施設の即刻停止
• 原子力エネルギーを持続可能エネルギーと分類するEUタクソノミーからの削除
• EURATOM欧州原子力共同体協定の解約
• フクシマであろうと世界のどこであろうと、放射能汚染水を海洋放出しない

 

 

主催:
NaturFreunde Berlin
Green Planet Energy
Sayonara Nukes Berlin

 

共催:
AK Rote Beete (Linke Regionalgruppe)
AntiAtom Berlin
BürgerInitiative Lüchow-Dannenberg
BUND
BUND Jugend Berlin
Friedensglocken
Greenpeace Berlin
IPPNW Germany
Japanese Against Nuclear UK
Korea Verband
Rote Beete
Strahlentelex

 

 

広島・長崎原爆投下記念日の式典にSNB代表が演説

「平和の鐘協会」主催の広島・長崎の原爆被害者追悼記念式でSNBを代表してのロッコの演説(2022年8月6日)和訳(演説執筆:梶川ゆう)

ドイツと日本は署名しなかったものの去年は、核兵器禁止条約がついに発効し、今年末にはドイツ最後の原子炉がとうとう停止される予定でした。

戦時中世界で初めて広島と長崎に原爆が投下されてから77年後経った今、このかすかな希望の光がこうも簡単に消されてしまうなどと誰が想像したでしょうか?

ロシアによるウクライナ侵攻で核の脅威はまた現実的なものとなり、これまで軍縮に賛成だった人たちが急に、核抑止力や核傘下の重要性を強調し始めました。そしてまた、ロシアによるウクライナ侵攻によりヨーロッパは、急激なエネルギー危機を迎えることになりました。これは私たちがロシアのガスだけでなく化石燃料にまだまだ依存し過ぎだからです。それに伴い、まだ稼働しているドイツの最後の原発を今年末より長く運転させようという声が高くなっています。現在のガス欠乏の危機は必ずしも電気の欠乏を意味してはいないにもかかわらず、です。EUは原子力エネルギーを「持続可能」とみなし、天然ガスに並んで「タクソノミー」というグリーンのラベルを貼ろうとさえしています。このように私たちは今年の夏までにまったくひどいニュースに見舞われてしまったのです。

原爆が初めて戦争で使われてから、人類は世界各地で核武装しました。2021年の始め、13,080の核兵器を9か国が所有、そのうち3825投下準備と予測されました。世界第一の核保有国であるロシアは6,255の核弾頭を所有し、アメリカ所有の数は5,550でした。人類を何回も破滅させられる、これだけの数の恐ろしいものがどうしてできてしまったのかは、まったく理解しがたいと言えます。

しかしそれだけではありません。この「悪魔の技術」を使いこなし、平和利用できると軽々しく信じている人たちがたくさん世界に存在します。2021年末には33か国に436もの原子炉がありました。しかし、今年2月に私たちは、軍事で原発も攻撃目標になり得るということを思い知らされたのではなかったでしょうか? 77年にはこれはまだなかったことです。事故で破壊したチェルノブイリ原発は2月末にロシアの手に堕ち、その次にヨーロッパ最大級の原発ザポリージヤも攻撃されました。あの時何が起きる可能性があったのでしょうか、そしてこれから何が起きる可能性があるのでしょうか?

原子炉は恐ろしい脅威となるのに、直接攻撃される必要はありません。電力供給が中断されるだけで十分です。それが2011年にフクシマで起こったことです。それに、ヨーロッパに戦争があるだけではありません。私たちは予測できない極端な異常気象をもたらすグローバルな気候危機を迎えています。核保有国であるフランスはエネルギー供給でロシアにほとんど依存せず、電力需要の約80%を原子力でカバーしているとことを誇りにしていますが、気候変動で原子炉冷却に必要な川が枯渇したり川の水温が温かくなり過ぎることに関してはなにも考えてきませんでした。

核兵器と原子力エネルギーは同じコインの両面に過ぎないことを私たちはよく知っています。残念ながら今の世界は自然災害、武力紛争、人間であるがゆえの過失、技術的欠陥や故障、あるいはテロ行為により、いつ爆発するかしれない核兵器と原発に覆われています。核分裂の連鎖反応や放射線は敵と仲間の区別はしないし、同じ技術が軍事的に使用されようが平和利用されようが構いはしません。広島と長崎に77年前に初めて原爆が落とされてから、軍事紛争でまだ一つも原爆が落とされていないという事実は、これから先もだから安全だという保証には一切なりません。私たちはすでにチェルノブイリ、スリーマイル島、そしてフクシマを体験してきました。原発がある限り、それはどこかに装備されている原子爆弾と同じように人類の脅威を意味するものです。だからこんなものを持ち続けるべきではないということを理解するのが、どうしてそんなに難しいというのでしょうか。

 

北海道・寿都町の最終処分場反対グループへのゴアレーベン市民グループからの連帯メッセージ

2022年9月末

日本・北海道の寿都町が最終処分場建設に向けた政府の調査を受け入れる誘致を表明し、それに反対する運動グループができている(この内容については、詳しく報道している次の北海道放送の動画を参考にしてほしい:「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」https://youtu.be/N0ciJo7gxPo)このことを知ったビュール(フランスで最終処分場建設が計画されている場所)の反対運動のグループが、 連帯メッセージを寿都町の「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」に送り届けた(フランス・リヨンで活動する「遠くの隣人3.11」が中心となってメッセージを和訳し仲介した)。(そのメッセージは以下のリンクで閲覧可能:https://nosvoisinslointains311.home.blog/2022/10/07/message-de-soutien-aux-habitant-e-s-de-suttsu-depuis-bure/

それで、私もドイツからもぜひ同様の連帯メッセージを貰えればいいと思い、ゴアレーベンのBürgerinitiative Lüchow-Dannenbergの理事会メンバーとアッセの「核のゴミレポート」(Atommüllreport)を発行しているグループ、アッセのArbeitsgemeinschaft Schacht KONRADに連絡をして事情を説明したところ、ゴアレーベンのグループからはさっそくメッセージを貰うことができた。核のゴミレポートからもぜひAG Schacht KONRADと一緒にメッセージを出すからもう少し待ってくれ、という返事が来ている。このゴアレーベンからのメッセージはさっそく和訳し、「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」に送り届けることができたので、そのメッセージを以下に紹介する(この市民団体の説明は最後)。

寿都町の皆さまへ

かつて核廃棄物処分場として選ばれたゴアレーベンで生まれた抵抗運動のグループである私たちは皆様にここに、心からの連帯の気持ちをお届けしたいと思います。核廃棄物処分場探索が、唯一地学的条件だけを考慮して行われることを祈ります。それがどんなに難しいことであるかは、私たちがよく知っていますが、それだけが正しい道です。それを達成する上で、皆様が信頼、勇気、持続力を持ち続けることを祈ります。核廃棄物処分場を決定するまでに村や共同体に与えられるお金は、そこに住む住民たちの生活基盤をかえって悪化させるのだという事実を、皆さんがいろいろな人たちに説得していけることも望みます。

皆さんは今は、広大な砂漠の中で声を上げている孤立した存在のように思えるかもしれませんが、あなた方の勇気、先見の明、そして次に続く世代に対する顧慮はとても重要であると同時に、正しいものです。原子力エネルギーと核兵器のない世界を実現するため、一緒に歩んでいきましょう。

皆様に対し心から励ましと勇気を送ります。

市民イニシアチブ・環境保護リューホフ=ダンネンベルク、ダンネンベルク・フクシマピケ、そしてそのほか世界中の心ある人たちより

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(団体の説明)

市民イニシアチブ・環境保護リューホフ=ダンネンベルク(Bürgerinitiative Umweltschutz Lüchow-Dannenberg):1972年、かつての西ドイツの東ドイツ国境近くに位置したゴアレーベンという岩塩ドームのある土地に核廃棄物処分場および再処理工場などを含めた複合核関連センターを建設するという計画に反対してできあがった市民環境保護団体。ヴェントラントという地域にあるこの市民NGOは千名以上のメンバーを数え、農民たちのグループも含め、長いこと政党などに属さない独立した団体として活発に反原発運動を展開してきた、ドイツの反核運動で長い歴史を持つグループである。ことに使用済み燃料から再処理後、処理できない高レベルの放射性廃液などがガラス固化されいわゆる「キャスク」となってフランスのラアーグなどからドイツに戻される際、その貯蔵方法や場所に対する問題が未解決なままゴアレーベンなどに持ち込まれることに反対して、その輸送を非暴力的に阻止する運動を展開し、何度も話題になった。ドイツ政府はずっとゴアレーベンを処分場候補から外さなかったが、どういう地学的条件で選定するかを定める「最終処分場サイト選定法」が2017年に出来上がり、2020年になってようやくゴアレーベンの岩塩ドームは最終処分場としては不適当であると判断され、最終処分場候補から消された。それでも今もこの市民グループは核のない世界を目指して活動を続けている。

(ゆう)

民主主義を壊した安倍元首相の国葬を許さない

民主主義を壊した安倍元首相の国葬を許さない

よそものネット有志による声明

日本政府は、カルト教団の被害者に暗殺された安倍元首相の「国葬」を法的根拠のないまま勝手に閣議決定した。彼が行った政治を賛美し、国民に弔意を強制する儀式を国会で議論もせずに押しつけたのである。これに対して国民の大多数が反対しているが、改める様子はない。

これは言語道断である。安倍元首相が進めた政治とは、日本国憲法の平和理念を「拡大解釈」して覆し軍事拡大を促進、大日本帝国と軍による植民地支配・侵略戦争の加害と犯罪を矮小化・否定する歴史修正主義を正当化し、ヘイトスピーチを助長させ、さらに教育とメディアの統制を強化した、まさに「民主主義壊し」であった。また、福島原発事故の実態を隠蔽・矮小化してオリンピックを誘致し開催、原子力政策を推進し被害者を切り捨て、ネオリベラル政策で格差の拡大を深めて弱者を苦しめる一方、元統一教会や日本会議など右翼(極右)団体と癒着して政権存続に利用し、国政を私有化して利権者・集団を優遇した。

このように民主主義と立憲主義に反する政治を進め、公文書の改ざんさえ行った安倍元首相の不正行為の数々は、死後も検証され、追及されるべきである。私たち、民主主義と立憲主義の擁護・強化をめざす海外に住む日本人を主としたグループ・個人
は、以下に述べられた竹内康人氏のテキストに賛同し、多額の国税が投じられる安倍晋三の国葬に、断固反対の意を表明する。

反天ジャーナル アベノツミ10条、勲章の内実
竹内康人(歴史研究家)
https://www.jca.apc.org/hanten-journal/?p=1697(転載許可済)

発起人
梶川ゆう(ベルリン、ドイツ)
杉田くるみ(グルノーブル、フランス)
飛幡祐規(パリ、フランス)
団体・個人名
Sayonara Nukes Berlin
よそものネット・フランス
スイス・アジサイの会
JAN(Japanese Against Nuclear) UK
ドイツ在住
熊崎実佳
藤井隼人・弘子
フランス在住
辻俊子
小森浩子
波嵯栄ジュフロワ総子
坂田英三
宮崎洋一
齋藤紀子(Motoko Saito)
Shukuko Voss-Tabe (田部淑子)
深作裕喜子
田中千春
桐島敬子
柴田真紀子
林瑞絵
白髭節子
富樫一紀

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