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ソーラーハウス (Effizienzhaus) 見学

2016 年 2 月 1 日に何人かで Berlin の Fasanenstrasse にあるソーラーハウスを見学する機会がありました.このソーラーハウスは Bundesministerium fürUmwelt, Naturschutz, Bau und Reaktorsicherheit によって実験として建てられたものです.プロジェクトは Effizienzhaus Plus mit Elektromobilität と言い,「電気自動車を含む効率的家屋プラス」とでも訳せばいいでしょうか.

このソーラーハウスはドイツでは 35 件建てられたエネルギー効率の高い実験用の通常の家屋の1軒です.それぞれが異なる建築家によるもので,一件一件異なります.ベルリンのものは写真のようにかなりモダンなキューブ形状です.しかし,伝統的なドイツの家のようなものもあります.

Berlin にある Effizienzhaus Plus
Berlin にある Effizienzhaus Plus
Effizienzhaus Plus 内
見学会での説明会 (Effizienzhaus Plus 内)

エネルギーの効率的な家屋,と言っても Plus と名前にあるように,省エネではなく,「年間で作るエネルギーが消費するエネルギー以上になる家」の実験として建てられています.これは電気自動車 1 台を含みます.それぞれの家では,公募で選ばれた家族が1 年住んでエネルギー消費の実験をします.この家にはこれまで 2 家族がそれぞれ 1 年住みました.

この家はソーラーパネルを使って電気を生産し,蓄電池に貯める方式です.この家の建築家は家庭でのエネルギー消費は,主に朝,そして夕方から夜にかけてあり,昼は家族が仕事や学校に行くために下がると予想し,ソーラーパネルを東と西の壁に設置してあります.また,外観 (色) を重視したため,エネルギー変換効率が10% と比較的効率の低いパネルを利用しています.

ドイツでは家屋では暖房でのエネルギー使用が大きいので,窓は 3 重構造の熱を伝えにくいもの,換気には熱交換器,暖房はヒートポンプを利用し,南側と北側は大きなガラスで採光を重視,また,電灯は LED を利用,壁も断熱を重視するなど,様々な省エネの技術を利用しています.また電気エネルギーだけで全てすむようにガスなどは利用されていません.

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熱を逃がさない 3 重構造ガラス

実験結果は,初年度には家で消費する分のエネルギーは生産できましたが,自動車の分まではまかなえませんでした.しかし,この家ではエネルギー消費をモニタリングしており,2つの大きなエネルギー消費源が特定されました.1つは熱交換器が製造した会社の説明通りに作動しなかったことで,これは交換されました.そして,リビングからすぐ階段がありますが,リビングの熱が階段に抜けていくことも判明しました.そこでリビングの出口にガラスのドアを1枚設置しました.この変更の後,2年目にはこの家で生産されたエネルギーの総量は年間を通すと,家屋と電気自動車のエネルギー消費を含めて上まわりました.また,動きセンサーライトは,猫を飼っていた最初の家族には合わないという話もありました.

様々な最新技術が使われているのに,目標達成には結局「1枚のドア」が足りなかったということは興味深いことでした.やはり,実際に実験する必要があるのです.また,利用者のマインドが省エネをあまり考えずに,少し浪費する傾向があったことです.確かにエネルギーが全部自分の家で生産されるとなると,あまり省エネを考えなくなるかもしれません.しかしそれは社会のマインドとしてどうなのかという新しい問題を提起します.あとは,空気の熱を逃がさないという意味では窓は開けない設計というものもあるそうなのですが,住んだ家族には窓が手動で開けられるということは重要な要素だという結果などもあります.これらの結果は全て online で見ることができます.

さて,ここからは私の感想です.

私がこの家を見て思ったことは,「こんなボーグキューブみたいな家には住みたくないな」でした.ただ,これはこの家が3年で解体する実験予定だったことや,建築家のデザインによるもので,他の Effizienzhaus Plus には「この家なら住んでみたい」というものもありました.また外観は私の好みではありませんが,内装は良かったと思います.

今回の見学では,技術の成熟が見えてきたことが印象に残りました.この家は既に 2012 年のものですが,ドイツの技術は既に,

省エネではなく,エネルギー生産であること

です.そして,先にデザインの好みの話をしましたが,私が感じた問題は既に技術的な性能問題ではありません.デザインが重要になってきたということは技術が成熟してきていることを示していると思います.私は 1999 年に 5 色の iMacというコンピュータが登場した時のことを思い出します.私にとって,コンピュータは性能でした.「CPU が Power PC 750 の 266MHz はいいが,メモリが少ないかな.」などと思っていました.しかしその当時,あまりコンピュータになじみのない人達が,「何色の iMac がいい?」と,色の話をしていたことに驚きました.インテリアのデザインの一部としてコンピュータが考えられた時,技術の成熟を感じました.一般に広まる時には,性能はあまり問題ではないのだと驚きでした.

今回の家でもそうでしたが,ソーラパネルの性能は落としても色を重視するというデザインが考えられていました.今後重要なのは,色のあるソーラーパネルなどかもしれません.今後,様々な色のパネルが生まれ,それがデザインとなって,やがてソーラーパネルとはわからなくなる時に,この技術はより成熟するのでしょう.このような家は,エネルギー効率だけを語る時代ではなくなりつつあるまで進歩していました.たとえば,緑のソーラーパネルのある家は,遠目には庭の植物と一体化するようになるかもしれません.

自然エネルギーの他のもの,例えば風力も,風力と見てわかるようなものではまだまだかもしれません.それはオランダの風車のように風景となる方向に進歩するかもしれません.もしかしたら遠くから見たら木のように見える風力発電機ができるかもしれません.垂直軸発電方式など既にある技術がやがて景観を考えたデザインとなる日が来るでしょう.風力発電地域はいつか森のようにしか見えないという時が来るでしょうか.いや,本物の森の木々の中に気がつかないように風力発電機がある,そういう形で技術が成熟していくのかもしれません.発電所は自然がいっぱいある公園であるという未来をふと想像してしまうような家でした.

安保法制成立後の日本社会とどう向き合っていくか@ロンドン

10月10日ロンドン某所にて開催されたイギリス在住の大学生らによる「安保法制成立後の日本社会とどう向き合っていくか」と云うテーマの交流会に参加した。安保法制強行採決以後の日本社会に対して、自由と民主主義のためと云う観点からわたしたちがどう考え向き合って行けば良いのか、また行動していくためのネットワーク作りの場として、会の趣旨にふさわしい大変有意義な集まりとなったと思う。

主催者の大学生の挨拶

スカイプを通して、日本のSEALDsメンバーから日本で急速に広がりを見せつつある市民運動やその意義について、首都圏反原発連合や戦争させない・9条壊すな!でおなじみの総がかり行動実行委員会ら他団体との良好な協力関係、または相互支援があったこと。普通の大学生らの活躍により、一般市民に参加を促すためのハードルを下げる役割があったことなどが語られた。

英エセックス大学人権センターフェローの藤田早苗氏

英エセックス大学人権センターのフェロー藤田早苗氏の“自由と民主的な社会のために必要なこと“では政治と日本のメディアの在り方についても問われた。

後半は参加者同士のフリートークの場に。幾つかのグループに分かれ「あなたにとって最も関心のある日本の社会・政治問題は何か」、「その問題に取り組むうえで最も重要な事は何か」について議論をし、同席した学生らから活発な意見を聞くことができた。

私は、社会や政治問題については個々にあるとして、こうした問題に取り組んでいくための土壌づくりについても話した。例えばドイツの学校の教育課程にはふんだんに議論の場が設けられており、学生たちは早くから様々な問題について討論している。学生たちは必ずしも是否や善悪などを決議するためにのみ討論するわけではなく、どんな意見にもその相手の存在を認め、耳を傾け、議論する。教師は生徒が自己を主張する行為に点をつける。こうした過程や場面は各家庭ごとにも度々見受けられる。子どもがしたい事、したくない事にも理論があって、主張があるものに応じる大人たちの姿を日常的に目にする機会がある。みんなにそれぞれの主義主張があり思想が違うのは当たり前だ、そういう前提に立って積極的に話し合える社会づくりをしていくこと、これは私たちが直ちに個人単位で取り組んでいけることでもあり、こうした土壌づくりが今後みんなにとってより良い社会を育む糧になると考えている。

私たちSayonara Nukes Berlin は原子力の利用に反対するベルリンもしくは近郊都市に在住する市民の集まりであり、趣旨のひとつには原子力にまつわる話題(健康/環境/政治/社会/法律)に関して独立した情報と議論の場づくりを掲げている。311以降、フクシマはもちろんのこと、秘密保護法、今回の安保法制の強行採決に至るまでに、今や日本はもとより国際社会からも日本の民主主義の在り方が問われている。この度の会の趣旨が私たちの活動にも関わりのあるものとして、今後もこの活動に積極的に参加していきたいと思う。R

————————————————————————– 2015/10/10 【ロンドン】安保法制成立後の日本社会とどう向き合っていくか:イギリス在住者による交流会(IWJ動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/269833

最終処分の話をしようや (6): 最終処分の資金はどうなっているのか

前回は最終処分の方法についてみてきました.放射性廃棄物を処理するのは簡単ではなく,費用がかかります.その費用はどのようになっているのかが今回のお話です.

最終処分の資金

最終処分の資金は,国にもよりますが,原発を有する電力会社が徴収した電力料金からバックエンド資金として積み立てています.利用者負担原則にしたがって,原発で発電された電気を使用した者がそれによって発生する放射性廃棄物と老朽化して使えなくなった原発を処分するために必要な資金を負担します.

ドイツの場合にはバックエンド資金は電力会社が全体で300-360億ユーロを積みたてています.ドイツが世界で最もバックエンド資金を積み立てていると見られますが,それとてそれで足りるという保障はまったくありません.

日本でもバックエンド資金が積み立てられていますが,日本の場合は永久に核燃料サイクルが機能するとの前提で,最終的に残る使用済み(MOX)燃料を処分する資金は含まれていません.

いずれにせよ,積み立てられた資金が不足し,原発を使用しない世代にその負担を押し付けることになるのは間違いありません.

最終処分状況

高レベル放射性廃棄物の最終処分を実際に行なっているところは世界でもまだありません.現在フィンランドのオンカロで建設中,2020年稼動開始予定の最終処分場がおそらく世界最初のものになると思われます.以下ではドイツと日本の現在の状況をまとめました.

ドイツの最終処分状況

低中レベル放射性廃棄物のドイツの最終処分については以下のようにいくつかの計画がありましたが,様々な問題を今後解決していかねばなりません.

  • ジャハト・コンラート
    • 地下1000メートル
    • 元鉄鉱石鉱山で,その上に粘土層
    • すでに運転許可も出され,2017年からの運用が計画されているが,まだ技術的な問題があり,運用開始が遅れる可能性が大きいと見られる.
  • モアスレーベン(旧東ドイツ)
    • 地下約500メートル,岩塩層
    • 元石灰採掘場,元武器製造の強制収容所
    • 水漏れ,落盤の危険がわかり,2001年閉鎖が決定
    • 2014/2015 閉鎖完了の予定
  • アッセ(旧西ドイツ)
    • 地下約 1000 メートル
    • 岩塩層の適性試験用として運用が開始された
    • 水漏れが判明,高レベル放射性廃棄物の破棄発見
    • 全ての放射性廃棄物を取り出す予定

高レベル放射性廃棄物の最終処分場に関しては,ドイツはゴアレーベンで調査を開始していましたが,最終処分場の選定は白紙状態に戻されました.その後最終処分選定法が制定され,各界の代表を集めて最終処分場を選定するための委員会が設置されました.今後の予定は以下の通りです.

  • 2013年7月,最終処分場選出法が制定される
  • 最終処分庁が設置される
  • 2015年末までに最終処分場選出手順作成
  • 2035年まで運用開始予定 (勉強会後追記:委員会は現段階で,バックエン資金不足などを理由に,高レベル最終処分場の運用を2170年からにしなければならないとも発言しています.)

ゴアレーベンでは地下約1000メートルの岩塩層を調査してきましたが,今後どのように展開していくのかはまだ不明です.

ドイツでは当初永久貯蔵を計画していましたが,運用期間を 100 万年として,最初の 500 年間は放射性廃棄物を取り出す可能性を残すことに変更しました.取り出すというのは,その500年の間に,もしかしたら何らかの技術の進歩で放射性廃棄物の無害化が可能になる可能性を考えてのことです.

日本の最終処分状況

日本では,低レベルの放射性廃棄物については,六ヶ所村において最高地下100mの最終処分場が稼動中です.高レベルの放射性廃棄物のうち,使用済み核燃料そのものに関しては,現在ではまだめどの立っていない核燃料サイクルの確立が今後可能であることを仮定しており,再処理することが前提になっています.そのため,特に福島第一原発事故後使用済み核燃料の直接処分を求めるべきだとの議論が起こってきていますが,使用済み核燃料を直接最終処分することも,再処理後のガラス固化体を最終処分する具体的な計画はまだありません.

高レベルの放射性廃棄物のうち,ガラス固化体は2020年までに4万本が想定されています.これに関しては候補地を公募し,検討などは10数ヶ所ありましたが,公募の取り下げなどで消滅し,現在(2014年12月現在)未定です.(勉強会後追記:政府は公募を諦め,政府自らが選定することを決定 (2015年5月現在) [1])

日本では地層処理の研究施設の事例がいくつかあります.北海道の幌延(ほろのべ)町では,地下 350 メートル以上,堆積岩の地層処理について研究が行なわれています.岐阜県の瑞浪(みずなみ)市では,地下約 500メートルの花崗岩の地層処理について研究が行なわれています.

ただし日本では他の国に比較して,最終処分場として「水のない1万年を越えて安定した均一地層」というのは簡単ではありません.地震が頻繁に発生することや,地下水が豊富という最終処分には向いていない条件がそろっていることが問題になっています.

やまうちメモ

中低レベルの最終処分に関しては除染などで出た放射性廃棄物の最終処分場の検討が今後宮城県で行なわれます [2] (2014年12月の状況).


最終処分の大原則

最終処分の大原則は「国内処分,利用者負担」です.実際にエネルギーを使った人達が全ての処分の負担をすべきです.次の世代に負の遺産を残すべきではありません.しかし,今となってはそれは不可能です.

現在可能なこととしては,たとえば,自然エネルギーへの投資によって後の世代の負担を軽減することがあります.利用者の世代では原子力の負の遺産である廃炉や最終処分が完了しません.ですから,利用者の世代が次の世代のためにできるだけ多く自然エネルギーに投資して,その負担を軽減することを考えなければなりません.そうしなければ,世代間で負担が公平に分配されず,原発の利用者世代が残した負の遺産を次世代に押しつけ,次の世代の発展を阻害する可能性があります.

最終処分の現状に関するやまうちメモ

今回もまとめとして,私(やまうち)の個人的な感想をここに述べさせて頂きます.

原子力発電所は無限に稼動できるわけではなく,廃炉がやがて必要になり,そして最終処分が必要です.核燃料サイクルは40年以上の年月と10兆円以上の予算を使った現在でもまだだめどが立っておらず [3],これが前提の国策は考え直すべき時点に来ているのではないかと私は感じます.世界の他でもこの方法は撤退が続いています.たとえ燃料が再処理できたとしても,再処理の工程で高レベル放射性廃棄物は発生し,廃棄物はガラス固化体として増え続けています(電気事業連合会の資料 [4] より).ということは,廃炉と最終処分という負の遺産が将来に残ることは残念ながら避けられません.

ここでは利用者負担の原則ということを書きましたが,そうする理由は将来の発展のためです.利用者負担の原則を無視する考えもあるでしょう.自分がよければ,子孫や国が将来滅ぶのはかまわないという考えです.民主主義でそう判断することは可能です.しかし,それはいいのでしょうか? 借金を重ねる政策を民主主義で選択し,後に借金を返す時には皆で投票して借金を返したくないから,他の人に負担してもらおうと決めることもできます.民主主義的に決めることはできても,それで済むわけはありません.たとえば,景気を良くすると決めることと,景気が実際に良くなることは全然別のことだからです.明日から 1 + 1 = 3である.1 + 1 = 2 は禁止する.と投票で決めることはできます.しかしどんな決めかたであろうと,決めたことと,現実とは基本的には別のものです.責任をとらないと決めることはできます.しかし,現実はどうか.世界では責任をとらない人は信頼を失い,資本主義では信頼のない人には金はまわってこなくなります.つけがあれば,誰かがつけを払わねばならない.他人はそれを引き受けたくない.それを後世にまわそうとすれば,そのような人々の社会は後に行くほど弱くなることでしょう.利用者負担の原則を守る意味ということは少し考えても良いと思います.

利用者負担の1つである日本のバックエンド資金については,あまり情報がみつかりません.ドイツの積立てを300億ユーロとして本日(2015-7-3)では 1 ユーロ136 円なので,およそドイツにはバックエンド資金は4兆円があり,それで不足と考えられています.この記事[5]によると,日本の電力産業には廃炉費用として1兆4800億円の積立があるとあります.ただドイツの金額はバックエンド資金なので廃炉費用のみではありません.日本のこの金額が廃炉費用のみならば,バックエンドとしてはどれだけの積立があるのかが興味あります.ただ,金額を一概に比較することもできません.というのも現時点では日本の原子炉の数はドイツの2倍以上あるからです.また,日本で不足分を補うために廃炉後も積立てるということですが,廃炉の資金を廃炉後に積みたてるというのは原子炉がない状態で積立てることになります.つまり,原子力で生み出される電気では原子力にかかる費用がまかなえないので,それを水力や火力,あるいは太陽光に転嫁するという意味だと思います.利用者の意見を聞かずに,利用者負担にはせず,利用者の子孫に強制的に負担させることになるのは,どうも納得がいきません.「便利なのものがあるから使ってみて下さい,安くしておきます.」と言い,後で,「借金はあなたのお子さんにつけておきました.」というのは納得いかないです.特にその借金を背負わされる子は納得がいかないのではないでしょうか.バックエンド資金については今後も情報に気をつけたいと思っています.

私個人の意見ですが,日本の将来の発展を阻害する古いシステムの一時的な延命への投資は理解に苦しみます.短期的に多少のリターンがあるとしても,長期的に負となるものは,結果的に国家を衰弱させることが予想できるからです.負の遺産は可能な限り早めに清算してしまうのが良いと思います.

また,原子力発電所には安全保障における負の面もあります.たとえば,アメリカでの原子力発電所計画が躊躇すべき理由としてコストだけではなく,テロによるリスクが大きいという議論があります[6].この議論では,原子力発電所は国土を失なわせる効率的な攻撃目標であり,太陽光や風力などの自然エネルギーの安全性というのは,テロや戦争に対しても強いという議論です.私個人ではそういうリスクを数値としては評価できませんが,他の国で評価の進んでいるこのようなリスクも想定するべきではないでしょうか.

私達の欲しい未来とは何か,子孫達にどこまで負の遺産を作り続けるのか.私達の未来に何ができるのか今後も考えていきたいと思います.そして持続的な発展が私達の未来にあることを願ってやみません.

次回

今回で最終処分についての勉強会でのお話は終わりです.このお話を読むにあたって,いくつかの専門用語がでてきました.私自身,この勉強会に参加する前は,ベクレルとかシーベルトとかいう単位は報道などで聞いたことがあるけれどもどう違うのかよくわからない.ということもあり,このような用語や放射能とはそもそもどういうものなのか,ということを私自身が理解した形でもう少し説明したいと思います.そうすると報道などでどうして違う単位が使われているのかなどが少しわかってくるのではと思います.ですから次回は付録となります.

後記: 2015-6-26(Fri) 経済産業省(宮沢洋一経済産業大臣)は「核燃料サイクル事業」継続策を検討する作業部会の設置を了承しました.

参考文献

  1. 朝日新聞, 国主導で原発ごみ処分地選定、「有望地」提示 閣議決定 (2015-5-22), http://www.asahi.com/articles/ASH5Q335KH5QULBJ002.html
  2. 河北新報, 宮城県知事,詳細調査受け入れ 最終処分場 2014-8-5, http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201408/20140805_11016.html, (Online; accessed 2014-12-22)
  3. 東京新聞, 45年で10兆円投入.核燃サイクル事業めどなく, http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2012010502100003.html, (Online; accessed 2014-10-04)
  4. 電気事業連合会 (The Federation of Electric Power Companies of Japan), 原子力発電について(Nuclear): ガラス固化体(Vitrified radioactive waste), http://www.fepc.or.jp/nuclear/haikibutsu/high_level/glass/, 2014, (Online; accessed 2014-12-21(Sun))
  5. 西日本新聞, 原発解体費4割不足 廃炉後も電気料金で穴埋め 電力9社積立金調査, http://qbiz.jp/article/48036/1/ (Online; accessed 2015-7-3)
  6. Amory Lovins, A 40-year plan for energy, TEDSalon NY2012, http://www.ted.com/talks/amory_lovins_a_50_year_plan_for_energy, (Online; accessed 2014-12-22)
  7. 朝日,原発回帰 再稼働を問う:4核燃サイクル、再開にらむ,http://digital.asahi.com/articles/DA3S11852879.html

最終処分の話をしようや (5): 最終処分の方法

前回は中間貯蔵について話をし,核燃料の放射能減衰のグラフを見て,中間貯蔵の想定している 30 年から50年という短期間では不足であることを見てきました.数万年以上の貯蔵,それが最終処分です.どのようなことが考えられているのでしょうか?

最終処分の方法

地層処分

最終処分の方法として現在現実的なものは地層処分です.驚きですが,以前は核廃棄物を海に捨てる,海洋投棄があったようです.しかし,環境を汚染する海洋投棄は今では国際的に禁止されています.現在では核廃棄物を地中深く掘って埋める地層処分が最も現実的な方法と考えられています.

地層処分では放射線を以下の2つの方法で遮蔽します.

  • 人工バリア: 容器,コンクリート
  • 自然バリア: 地層

このうち,遮蔽効果のほとんどは地中深く埋める自然バリアによってもたらされます.

廃棄物のレベルと国によってどれだけ深く埋めるかには次のような分類があり,異なっています.

  • 低中レベル放射性廃棄物
    • 浅層 (数百メートルの深度(日本等))
    • 中層
    • 深層 (1000m 前後 (ドイツ等))
  • 高レベル放射性廃棄物(+TRU廃棄物)
    • 深層処理

高レベル放射性廃棄物の地層としては次のような候補があり,それぞれ特徴があります.

  • 粘土層:
    • 欠点: 熱伝導率が低く,熱が逃げないので,地層が高レベル放射性廃棄物の熱で乾燥して亀裂が入り,汚染が漏れる危険がある.
  • 花崗岩層:
    • 欠点: 岩盤が硬いので掘るのに莫大なコストがかかる上,地層に地下水がある可能性があり,地下水によって汚染が拡散される.
  • 岩塩層:
    • 利点: 熱伝導率が高く,熱を逃がしやすいので.高レベル放射性廃棄物の熱が拡散される.
    • 欠点: 過去海だったため,どこかに水がある可能性が高く,水によって汚染が拡散される危険がある.

最終処分の地層としては廃棄物を長期間安定に保存するために,以下の条件が求められます.

  • 地層が均一である (均一であれば亀裂などがない,または起こりにくい)
  • 地下水が流れこまない (地下水によって汚染が拡散してしまう可能性がある)
  • 地層の移動がない (移動があると廃棄物が安定して保存されない)

地下水が流れているとか,亀裂があるなどとなると,長期間の保存では保存している核廃棄物が環境を汚染する可能性があります.そのため水(地下水)の有無は重要な条件になります.

最終処分場の事例

地層処分とは,地上から2本の竪坑を掘って,地下に坑道を作って最終処分に適した地層に放射性廃棄物を保管できるようにすることです.

図 4 は,東ドイツ時代にモアスレーベン(Morsleben)で建設,使用されていた低中レベル放射性廃棄物の最終処分場です.地下に壮大な貯蔵場が必要なことがわかります.なお,モアスレーベンの最終処分場は岩塩層が落盤する危険があることから,使用を中断し,閉鎖されることが決定されました.morsleben_1511_3

図 4.写真: 独モアスレーベンの最終処分場構造図 (写真提供: ふくもと氏)

ドイツのゴアレーベン(Gorlben)は当初,放射性廃棄物の総合処理場にする計画がありました.まず,中央中間貯蔵施設が設置されました.そのうちに,そこに最終処分場を設置する目的でその地下岩塩層が高レベル放射性廃棄物に適するかどうかの調査施設が建設されました.ただ,その適性には疑問もあり,これまで調査を中断したり,再開するなどを繰り返してきました.現在は最終処分場の候補地を白紙に戻して,最終処分地を選定するための委員会が国会内に設置されています.gorlben_DSC_0018

図 5.写真: 地層内にある油 (独ゴアレーベン) (写真提供: ふくもと氏)

図 5 は,ゴアレーベン地下調査坑道内の地層の写真です.黒い部分は油のある層で,岩塩層が均一でないことがわかります.

次回

ここまでで最終処分の方法についてみてきました.実際の最終処分場はまだ世界にはほとんどありません.しかし核のゴミは既に存在し,増え続けています.我々の世代はこの負担をしなくてはいけません.でなければ危険なものが処理されずに存在することになります.実際にはどこかにほおっておくという手もありますが,負担そのものはなくなりません.やまうち個人としてはこのほおっておく,放置する,という形の負担はしたくありません.なぜなら,そちらの方が結局もっと高くつくためです.どうせ負担しなくてはいけないのなら安くして欲しいのです.放置しておくという解答は,それで死人が出たり病人が出たり,国土が汚染され利用できなくなるという形での負担になるからです.この負担はどのようになっているのでしょうか? 次回は最終処分の資金についてのお話です.

高雄綾子先生を招いて。

8月30日。横浜市で市民測定所を立ち上げられた代表のひとりである高雄綾子先生にお越しいただき、“食の安全と市民測定所~震災後2年間の活動”と題して講演会を行った。

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福島第一原発の事故以後、友人の中には放射線測定器の購入に踏み切った者もいた。やはり子供を抱える母たちはいち早く敏感だった。高雄先生のお話によると、横浜の市民測定所にはチェルノブイリで活躍したと云われるセシウムを測定するためのATOMTEX 1320Aという測定器があるそうだ。立ち上げ当初、賛同者から寄付を募り、この150万円の機械を購入する事が出来たと言う。この様な高価な装置を用いても食品の測定には大変な労力を伴うと言う。

例えば、水分の多いものほど値が低くなるなど、測定が困難になる。肉や魚などは、非常に細かく刻み、測定中の腐敗を防ぐための処理を施すなど、主婦を中心としたボランティアメンバーたちが試行錯誤を重ね、限られた時間の中で様々な食品の調査をされているということだ。

こうした活動が実を結び、横浜市では、こちらの市民測定所のウェブサイトでの発表を意識するに至り、現在では神奈川県の他の市に比べ、横浜市の自治体による放射線測定数が増え、学校給食での産地の公開などから市民が子供に与える食品を選別する機会が持てる様にもなったということだ。ひとえに尽力された市民測定所のみなさんの努力の賜物である。食品の測定依頼は主に有料で行われ、または既出の測定結果もすべてが無料で公開されているわけではない。これは市民測定所の厳しい台所事情にもあるように、事故後2年を経て、活動を支援する為の会員数が半減するなど人々の関心が薄れつつあることも起因する。

今後、取り組んでいかねばならないことは、水産品の汚染についての測定だろう。今までの汚染状況やこうした測定結果などは、チェルノブイリの事故後にも見られた様子に酷似しているそうだが、私たちは未だかつてなかった大規模な海洋の汚染と云う未曽有の危機に瀕している。

もっともっと、海産品の汚染状況を調べていかなければ。しかし、魚をキロ単位で購入するコストや、セシウムばかりでなくストロンチウムまでもを調べるための機械は1500万円もするばかりか24時間の監視体制も必要だと言う。人々の不安や真実を求める声が、こうした市民測定所の支援に繋がればと切に願う。

本日のお話にもあったように、何をどこまで許容できるかはあくまで個人の問題である。市民測定所は、正しい知識を正確に伝えていく事で、市民がやみくもな不安に陥れられることなく日常を送る事ができる手助けに他ならない。台所を預かる一主婦としても(ジェンダーのみなさま悪しからず)、私の持てる責任は大きいのだな、とつくづく感じさせられる講演となった。

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難しい勉強会の合間に、癒しの歌声がWerkstadtに響く。

ベルリンに在住して間もないソプラニスタ皆川卓志氏が「Amazing Grace」をアカペラでの披露。9月3日のイベントでは、彼の新たな挑戦を見せてくれる。
イベント詳細https://www.facebook.com/events/1409172132630648/

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既におなじみとなった放射線テレックスのトーマス・デアゼー氏にも、来場者からの質問に答えてもらえることとなった。チェルノブイリから27年。未だ汚染の深刻な被害が残るドイツの水道水は調査され続けているのか、食品汚染のその後はどうなっているのだろうか。日本の現況を含め、続きは後日コラムにて。

講演中に発表のあった、日本全国での測定結果の統合を目指すフォーラムはコチラhttp://minnanods.jimdo.com/

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多忙な滞在期間中にも関わらずボランティアでこのような機会を設けて下さった高雄先生をはじめ、デアゼー氏、皆川氏にこの場を借りてあらためて感謝の意を表したい。

最後になるが、今回よりWerkstadtでの室料が発生する事になった。ご協力いただいたみなさまにも感謝したい。また、この日のグッズの収益と募金75.30ユーロは今後の脱原発運動に役立てたい。R

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高雄綾子:フェリス女学院大学国際交流学部専任講師。東京大学大学院教育学研究科満期取得退学。専門は社会教育学、環境教育学。ドイツの環境市民運動が社会の多方面に影響を与えたことに関心を持ち、環境教育の分野からその影響を研究中。

横浜市民測定所共同代表。http://www.ycrms.net/

高雄先生のチェルノブイリ事故後のドイツ市民測定所運動と市民の学びについてのコラム

http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/live/series/34

 

内部被曝を考える

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環境フェスティバルの翌日に行った勉強会「東電福島第一原発大惨事の今 ―放射線内部被曝による健康障害―」について、まとめておこうと思います。

今回お話を伺ったのは、岐阜環境医学研究所所長の松井英介医師です。呼吸器学や放射線医学の専門家で、フクシマ以降は内部被曝の危険を訴えて、日本のみならず海外でも積極的な活動をなさっています。かつてベルリンで研究をされていたこともあり、ベルリンは第二の故郷とおっしゃる松井さん。「松井先生」とか「松井医師」という肩書きをつけてより、つい「松井さん」と呼びたくなるような、朗らかで親しみやすい雰囲気の方です。(ということでここでは「松井さん」と表記します)

松井さんは「見えない恐怖 放射線内部被曝」の著者でもあり、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」の呼びかけ人の一人でもあります。内部被曝の専門的なことはそちらを参考にしていただくとして、ここでは、今回のお話の中で私が特に興味深いと思った点を挙げておきます。

まず、内部被曝とはなにか、という根本的な問いですが、これは外部被曝(たとえば原爆)と比べると分かりやすいと思いました。外部被曝がおもにガンマ線が外から身体を貫いたときの影響であるのに対して、内部被曝は、身体の中に沈着したさまざまな放射性物質からくり返し長期間にわたって照射される、おもにアルファ線とベータ線による影響です。
内部被曝の場合、影響を及ぼす放射線量は低レベルなのですが、放射性物質が体の中に留まって、そこから放射線を出し続けることにより健康被害が出ます。体のなかに取り入れられた放射性物質は、その性質によっていろいろな部分に溜まります。セシウム137は筋肉や心臓に、ストロンチウム90は骨や歯に、というように沈着して体の中にホットスポットができます。

内部被曝について考える場合、チェルノブイリ事故後の被害をみるのがよさそうです。主にガンマ線による高レベルの外部被曝である原爆の影響は、フクシマ後に微量の放射線を体に取り込み続けている現在の私たちの状況とは違います。しかし、現代の医学の基本にもなっているICRP(国際放射線防護委員会)の基準が、ヒロシマ・ナガサキの外部被曝の影響を元に推定したものなので、体の場所ごとに影響が違う内部被曝については過小評価されているそうです。
被曝の自覚がない人々に深刻な健康被害が出たという点では、イラク戦争で使われた劣化ウラン弾による被害も放射能の「見えない恐怖」を知る手がかりになりそうです。

フクシマが起こってから、必要に迫られて「放射能ってなんだ?」ということを調べだした私にとって、全く実感できないものの存在とその危険性を日々の生活の中で考えるというのはとても難しいことです。今回のお話を通じて、被曝を避ける云々以前に、そもそもそこに危険なものがあるということを突き止めてデータとして出すのが難しいことなのだということがよくわかりました。
たとえば、ホールボディカウンターでわかるのはガンマ線だけ。そうすると、ベータ線しか出さないストロンチウム90やアルファ線しか出さないプルトニウム239は測れない。空間線量を測るガイガーカウンターのようなもので食品の汚染濃度を測ることもできない。
松井さんが問題視していることのひとつに、日本での食品検査の際にストロンチウム90が計測されていないことがあります。ウクライナやベラルーシなど、チェルノブイリの影響が大きいところの調査では、セシウム137とストロンチウム90の許容線量限度値が決められたのですが、日本ではストロンチウム90が無視されています。ストロンチウム90はカルシウムと似ていて、骨に溜まる性質があり、内部被曝を考える上では非常に重要です。検出される量はセシウム137と比べ少ないのですが、ストロンチウム90の健康リスクはセシウム137の約300倍もあるそうです。
旧ソ連でできたことが、なぜ現代の日本でできないのか、などというと語弊はありますが、移住の問題にしろ、検査の問題にしろ、フクシマをめぐる日本の対応を見ていると、チェルノブイリから学ぶべきことはまだたくさんありそうです。

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松井さんのお話の中で、文系人間な私に特に響いたのは、原発というものの歴史的・社会的背景についてです。フクシマは起こるべくして起きたことなんじゃないか、私たちは清算できていない負の歴史の延長線上にいるのではないか、と思いました。原発を考える上で、第二次世界大戦や、原爆や、戦後の原子力政策を無視することはできません。

WHO(世界保健機構)は1959年に「IAEA(国際原子力機関)の了解なしに情報公開・研究・住民救助をしてはならない」という協定を結んだことにより、原子力に関する活動の自由を奪われているそうです。
原子力産業と結びつきの深いICRP(国際放射線防護委員会)が作った基準は原爆の情報をもとにしており、原子力産業に都合のいいようになっています。

「安全だ」「大丈夫だ」と言っている人々や団体は、何を根拠にそう言っているのか。彼らの示す「科学的根拠」はどこまで信用できるのか。背後にどんな権力やお金が潜んでいるのか。集めた情報をどうするのか。そういうことを疑ってかからないと、被害者はいとも簡単に「人体実験」の道具になり得てしまうばかりか、それを傍観する市民は結果的にその無責任な行為に加担するはめになってしまいます。

そんなおおげさな、と思うでしょうが、そこが私たちが歴史から学ばなければいけない核心部分だと思います。
731部隊の資料や原爆の被害者の資料はなぜアメリカに渡ったのか。
戦後に罪を問われなかった「戦犯」たちが何をしたのか。
第五福竜丸の事件後に起きた反原発(水爆)運動はなぜ消えたのか。
核のゴミで作られた劣化ウラン弾とは一体なんだったのか。
ヒロシマ・ナガサキ・第五福竜丸を経験した日本人がなぜ「原子力の平和利用」などということに手を染めてしまったのか。
そういう問いは、どこかで「なぜフクシマを経験した日本がまだ原発に頼ろうとし、よりによって外国にまで原発を売ろうとしているのか」という現在の状況に繋がってくるのではないでしょうか。

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内部被曝の恐ろしさを訴える松井さんは「脱ひばくを実現する移住法」制定への提言をしていらっしゃいます。内部被曝のメカニズムやチェルノブイリの被害などもここで詳しく紹介されているので、ぜひ一読してみてください。
”内部被曝による健康障害の深刻化を食い止めるために、今最も求められているのは、「家族や地域の人間関係を保って放射線汚染の少ない地域に移住し、働き子育てする権利を保障する法」(略称)の制定です。今だからこそ水俣病など公害闘争の歴史に学び、国際的には「チェルノブイリ法」を実現した市民運動に学び、その教訓を生かすべきです。”

松井さんの提言に深く共感する一方で、いまだに収束の見通しすらたたないフクシマの現状や、汚染された瓦礫や食品が全国各地にばら撒かれていることを考えると、早くなんとかしないと、肝心の「放射線汚染の少ない地域」が日本からなくなってしまうのではないか、という気すらします。
何を食べればいいのか、ということに神経をすり減らすだけではなく、未来に向けて社会を変えていく努力をしなければいけないのだと思います。

今回多くのことを考えるヒントを与えてくださった松井さんと、協力してくださった皆さん、どうもありがとうございました。(文責:KIKI)

参考
「脱ひばくを実現する移住法」制定への提言 http://tkajimura.blogspot.de/2013_04_01_archive.html

松井英介医師を招いて。

去る6月3日、メンバーの一人が所属するノイケルンのCafe/Bar、Werkstadtにて「放射線内部被曝による健康被害を考える」と題して、岐阜県環境医学研究所より松井英介医師にお越しいただき、講演会を行った。

素人ばかりが中心に集まる事と想定された講演会である。松井先生の配慮もあってか講演の内容については、専門的な知識を持たぬ私たちにも大変わかり易いものとなった。この素人、というのがポイントだと思う。福島の事故後に、数々の出版物や、専門家のブログが話題となったが、工学や医学の知識を持たぬほとんどの一般市民にとっては、難解な数値や専門用語のオンパレードで、なんとなく大変な事がわかったり、なんとなく恐怖を感じると云った程度である点は否めない。あまりに難しすぎると私の頭などは即座に拒絶反応を示し、一切の情報も受け付けなくなるのだ。

こうした専門的な学術のバックグランドなしでこれらの問題を理解し関わっていくことは一般市民には難しいのだろうか。 松井先生はこの日、多岐に渡る放射線や原子力発電所の問題に、世界や日本社会の縮図をも織り交ぜ、ひとつひとつの問題を優しく説き明かして下さったのである。

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ベルリン中から46名の来場者が。乳幼児を連れたお母さんたちも懸命に。

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深刻な内容も松井先生のユーモアの利いたトークで和やかなムードに。「救われる」とは来場者の声。

講演の終わり、松井先生の「食べ物の顔を見る」と云う発言を受けて、つと思う。私たちは豊かさと利便性を追求するあまり、あらゆることを他人任せにしすぎてしまったのではないか。人間が人間らしくあるべき本来の生活を取り戻していく事も、今後エネルギーにまつわる様々な問題を解決するための良き鍵になろう。

●松井英介医師の「脱被曝を実現する移住法」
http://tkajimura.blogspot.de/2013/04/blog-post_8566.html (外部ブログ「明日うらしま」)
現状を受け、私たちが今後どのようにこの問題と向かい合い取り組んでいくべきかを提唱されている。

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松井先生の講演・質疑応答の後、Bodypoet(Kazuma Glen Motomura)氏の即興のダンスが。

この日の松井先生の講演を擬えたもので、大変素晴らしいものであった。

また、講演会終了後にお寄せいただいた感想には大変励まされた。
私たちもみなさまと共に、今後の防衛策と日本の未来ある展望について学んでいきたいと思う。

最後になるが、ベルリン滞在の折の貴重なお時間を、先の環境フェスティバルとこの講演会開催の機会に割いて下さった松井先生ご夫妻に、この場を借りてあらためて感謝の意を表したい。R

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当日、松井先生からご紹介のあった、放射線防護協会の会長であるセバスチャン・フルークバイル博士の著書「子供たちへの手紙」は、ベルリン市内の以下の2店舗にて購入できる。

●Japanische Buchhandlung「YAMASHINA」
Pestalozzistraße. 67
10627 Berlin
+49 30 3237882

●HENO HENO
Kantstr. 65
10627 Berlin
http://www.henoheno.de/

“明日うらしま” でも 環境フェスティバルから松井先生講演会の模様までベルリンで雨にも負けない日本の若者たちの脱原発活動

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松井英介

略歴:医師、岐阜環境医学研究所所長 1980~81年西ベルリン市立呼吸器専門・Heckeshorn病院勤務。2001年3月まで岐阜大学医学部附属病院勤務。放射線医学講座助教授。退任後、岐阜環境医学研究所を開設、現在に至る。 日本呼吸器学会専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡指導医、日本肺癌学会および日本呼吸器内視鏡学会特別会員。 廃棄物処分場問題全国ネット共同代表、羽島市アスベスト調査委員会委員長、 NPO法人731部隊・細菌戦資料センター共同代表、「『戦争と医の倫理』の検証を進める会」世話人。

著書・分担執筆:「Handbuch der inneren Medizin IV 4A」(1985年 Springer-Verlag)
「胸部X線診断アトラス5」(1992年 医学書院)
「新・画像診断のための解剖図譜」(1999年 メジカルビュー社)
「気管支鏡所見の読み」(2001年 丸善)など

近著:「見えない恐怖 放射線内部被曝」(2011年 旬報社)
ブックレット「放射線被曝から子どもを守るために」監修著(2011年 旬報社)
セバスチャン・プフルークバイル著 エミ・シンチンガー訳「セバスチャンおじさんから子どもたちへ―放射線からいのちを守る―」 (2013年 発行:岐阜環境医学研究所 発売:旬報社)