最終処分の話をしようや (2): 最終処分とは? 放射性廃棄物とは?

最終処分とは

最終処分は,放射性廃棄物を周辺の環境や人体に影響のないように放射性廃棄物の毒性が低下するまで管理,保管することです.まず,放射性廃棄物の種類とそれがどこからでてくるのかについて話し,そしてどのようにそれを処分するのかについて話をしていきます.

放射性廃棄物について

それが放射性廃棄物かどうかを決める基準として,クリアランス制度があります.それは特定の測定条件で 10 mSv/y の線量当量を越えるかどうかで決まります.この条件を越えるものが放射性廃棄物とされます.またその枠内で,放射性核種毎に基準値(ベクレル値)が決められています. ここで勉強会では 10mSv/y 以上かどうかで廃棄物としては決まるのに,それにまた放射性核種毎に基準値があるというのは,基準がいくつもあるという意味か?という質問がありました.放射能核種毎の基準というのは,放射能核種の濃度を示すものであって,人に対する影響を示す指標となる線量値ではありません.年間線量 10 mSv/yの枠内で,規定された核種毎にそれぞれの放射能濃度が規制されているということです.そして,その基準を超える核種が一つでもあると,それは放射性廃棄物として取り扱われます.ただし,この説明は素人にはなかなか難しいと思います.クリアランス制度の基準によって,放射性廃棄物かどうかが判断され,その基準以下のものは市場でリサイクルも可能ということが1つのポイントです.

やまうちメモ

やまうちは原子力発電所から出てきて,放射線を出すものは全て放射性廃棄物であると誤解していました.この放射性廃棄物かどうかの基準値そのものの意味,つまり,放射能の単位のベクレルと放射線量の単位のシーベルト,また放射能と放射線の違いについて別枠にやまうちが調べたことを豆知識としてまとめておきます(FIXME: 後の記事が up されたらここからリンクを作成).


放射性廃棄物の分類

放射性廃棄物は,以下の3つに分類されます.

  • 高レベル (TRU廃棄物,使用済み核燃料など)
  • 中レベル (あまりこの種の廃棄物はない)
  • 低レベル

ドイツでは最終処分の都合から,基本的に熱を発生するかどうかで決めています.TRU廃棄物というのはウランの原子番号を越える超ウラン(TRans-Uranium)元素で,主に原子炉を稼動すると生成されるものです.

放射性廃棄物の発生源

高レベル放射性廃棄物(+TRU廃棄物)の発生源は

  • 使用済み核燃料
  • 再処理によって発生する廃液 (ガラス固化体)

などがあります. 低・中レベル放射性廃棄物の発生源には以下のようなものがあります.

  • 原子力発電所
  • 廃炉作業
  • 核燃料加工工場
  • 使用済み核燃料再処理施設
  • (ウラン鉱山,濃縮工場)(採鉱現地)
  • 医療機関
  • 産業工場
  • 研究開発機関,その他

原子力発電所は稼働中か停止中かにかかわりなく,保守作業をすると放射性廃棄物が排出されます.作業員の服などがそうです.医療や産業界でも,放射性物質が使用されるので,そこからも発生します. ドイツでは,すべての放射性廃棄物が危険物扱いとして規制,管理されていますが,日本では上記のリストの下 3 項目はまだ規制されていません.ですから,いつ,どこで,どう輸送され,保管されているのかはよくわからないということです.

やまうちメモ

やまうち個人の意見になりますが,できれば下3項目の放射性物質も,日本でもドイツ同様に危険物として何らかの管理体制を入れて欲しいと思います. また,クリアランス制度で 10mSv/y が放射性廃棄物になるか,普通にリサイクルして良いのかの基準でしたが,これが安全かどうかということはよくわからないことも個人的には注意すべきだと思いました.9.9mSv/y の鉄がリサイクルされて建物や家電に使用されてもこの基準からすれば合法です.実際,「鉄 放射線 スクラップ」などで検索するといくつかのニュースがみつかりますが,それらの中には合法とされるものもあるはずです.今回の記事ではこのクリアランス制度の基準の安全性については調査不足ですが,基準を通って市場に出てくるものはあるということは注意しておきたいと思います.


次回

今回は放射性廃棄物というものがどのような基準で決められているのかについて考えました.次回は放射性廃棄物とされたものはどのように処分されるのかの現状について考えていきたいと思います.

最終処分の話をしようや (1): 核のゴミの現状: なぜ最終処分の話なのでしょうか?

なぜ最終処分の話なのでしょうか

前回の勉強会,「廃炉の話をしようや 」で廃炉の後には放射性廃棄物が残ることがわかりました.しかし,その勉強会では私達はこの廃棄物をどうするのかという話については伺いませんでした.事故,あるいは寿命の尽きた原子炉をどうするのかというのが廃炉の話であり,廃炉には費用(一例: 1基1000億円)と時間(一例: 30年)がかかりますが,その後にまだ核のゴミが残る,というところで前回の勉強会は終わりました.こうなるとその核のゴミをどう処分するかという「最終処分」の話を聞きたくなります. 元々,SNB (Sayonara Nukes Berlin) のメンバーの一部からは両方の話を聞きたいという要望があったのですが,1回 2 時間半という枠で両方の話をするのは難しいということでした.そのためにまずは廃炉の話ということになりました.廃炉の勉強会の後,結局最終処分についても伺いたいという要望があり,今回の最終処分についての勉強会となりました.今回も前回に引き続き,ふくもとさんを講師としてお迎えしての勉強会になりました.以下の写真(図 1)が今回の様子です.(この勉強会は 2014年の11月15日に行なわれました.)

meeting_20141115図 1.「最終処分の話をしようや」勉強会の様子 (2014-11-15)

前回と同じく,このメモはその勉強会での記録を記録者の私が理解したようにまとめたものです.この記録は廃炉の話がわかっているとよりわかりやすいと思います.それは前回の記録をご覧下さい.また,講師のふくもとさんについての紹介なども前回の記録を御参照下さい. また,この記録はふくもとさんの説明やご意見を聞き,それについてこの記録者のやまうちが感想を述べたり,独自に調べた部分があります.記録者の考えの部分は,「やまうちメモ」のタイトルがついて別の節になっています.それは記録者のやまうちの感想であってふくもとさんの意見ではないことにご注意してお読み頂ければと思います.またこの文書の文責は記録者のやまうちにあります.

はじめに

前回,ふくもとさんはエネルギー問題について,「市民としてできることを考える」ことの重要さについて述べました.それについては前回の記録にもありますが,1つ補足しておきたいことを述べられました.それは次のようなものです.

福島原発事故の後に停電して,それが原発が止まっているからだと電力会社にいわれたら,その時それでも原発に反対できますか.そういうことを一度考えてほしい.

まずは考えて意見を持つことの重要さについて述べられていました.そのために情報を探し自分で理解することが重要であり,その結果,原発について反対するのもよし,賛成するのもよし,どちらにせよできるだけ正しい情報に基いて個々が考えて議論をするべきであるということです.

やまうちメモ

これは最初のやまうちメモです.最初に述べたように,やまうちメモは報告者のやまうちが勉強会に触発されて後で調べたことや,やまうちの個人的な感想,意見を書くところです. 私達が現状をどう考えるか,私達の未来をどう考えるのか,それは結局選挙で見られる民意によるものです.私もこの話を伺って考えました. 私の考えたことは,たとえば,原発のある未来が私の欲しい未来なのだろうかどうか.そして,電気が足りていないと言われたから原発に賛成し,足りているとわかったら反対,というものでいいのだろうか? でした.そこにはまず未来へのビジョンがあるべきです.現状との妥協はあるとしても,一人一人にできることを考えていくことをしなくては,未来に進んでいくのはできないのではないかということでした.来年やさらなる未来だけではなく,明日のことも大事です.しかし未来は明日の積み重ねです.未来を見て明日を妥協するのか,明日がなければ未来はないのだから,明日だけをまず考えるべきという考えもあるでしょう.難しい問題だと思いますが,時には立ち止まる必要があると私は思います.なぜなら私達,そして私達の子孫はその未来を生きることになるはずからです.これは私個人の意見ですが,今が良ければ,私達や,私達の子達の未来はどうでも良いという考えには私は賛成できません. 技術的には様々な可能性があります.電気を使わないというような極端な考えはなかなか受け入れにくいものかもしれません.しかし,自然エネルギーと水素生成の組み合せで,太陽光のように時間に依存するエネルギーも安定供給源となるような方法が可能かもしれません.しかもコストも含めた方法が技術開発によって将来可能になるかもしれません.その道を開くことも未来を考える1つの方法でしょう.それのような技術を将来海外へと輸出して国益とするということも考えに入れても良いかもしれません. 政治的にも様々な可能性があります.ドイツのように原発の電気は買いたくない人にはその道を,同様に原発の電気だけを買いたい人にもそうする道を開くのも1つです.どちらの考えであっても消費者の欲しいものが提供されていないことは問題で,これは選挙を含めた様々な方法によって市民から働きかけることができるものです. 結局,賛成派であっても反対派であっても自分で現状を判断して自分の未来についての自分の意見を考える必要があると思います.そのためにも地道,つまり退屈なことになりがちと思いますが,私も少しづつ現状を理解して考えていきたいと思います.この記録が少しでもその考える際の参考になることを願います.


次回

次回は最終処分とはどういうものか,放射性廃棄物とは何なのかについて考えていきたいと思います.

坂田雅子監督を迎えて。「わたしの、終わらない旅」上映会

ドキュメンタリー映画、「わたしの、終わらない旅」の上映会が6月2日、Sayonara Nukes Berlinの主催で行われ、ドイツ人、日本人など約60人が参加しました。

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あいさつする坂田雅子監督

映画の概要を紹介します。

2011年の福島第一原発事故後、坂田監督は母、坂田静子さん(故人)が1976年ころから反原発運動を続けていたことの意味に気づきます。そして、兵器と原発の2面性を持つ「核」について、フランス、マーシャル諸島、カザフスタンを巡り、そこで核実験と原発によって翻弄された人々を映し出しました。

映画を見る参加者
映画を見る参加者

フランスでは、日本の使用済核燃料が2950トン処理されたラ・アーグ再処理工場やANDRA(国家放射性廃棄物管理局)周辺で放射線検査をするACRO(放射線モニターNGO)の活動を紹介します。ACROの会長は「ラ・アーグの最大の汚染源はお金だと言われている」と話します。

アメリカの核実験が1946年から58年まで67回行われたマーシャル諸島。そのうち23回はビキニ環礁で行われました。実験のためにビキニを離れなければならなくなった島民は今も帰島できないでいます。1960年後半、アメリカの原子力委員会は「ビキニは安全、帰島できる」と発表し、72年から帰島開始、「何を食べても安全」と伝えられました。その後、多くの人が亡くなり、「これ以上住むのは危険」と再び島を離れなくてはなりませんでした。

1949年から89年まで470回の核実験が行われた旧ソ連、カザフスタン・セミパラチンスク。150万人が影響を受けました。実験場跡地の東に位置するセメイ市の病院ではガンの発症率が高いこと、若い世代の免疫力が落ちていることが指摘されました。実験場跡地、1万8千平方キロメートルの4分の1は除染され、4千平方キロメートルが農地にしても安全といわれています。旧ソ連時代、核開発が行われたクルチャトフ市の市長は「わたしたちは次世代の原発を開発しつつある。原爆と原発は別物なのです。きちんと管理していれば原子力はもっとも環境に優しいのです」と語ります。

1953年、国連総会でアメリカのアイゼンハワー大統領が「原子力の平和利用」についてスピーチをしました。その後、1954年3月1日に第五福竜丸の乗組員たちが水爆ブラボーの実験で被曝しました。日本では原水爆禁止運動が盛り上がりますが、平和利用へのキャンペーンが張られていきました。第五福竜丸の乗組員だった大石又七さんは「ビキニ環礁事件が起きたとき、みんなで勉強し考えていれば日本に54基もの原発はつくられなかったのでは」と問います。フランスの元原発労働者が「それが人を殺すことを知りながら、家で原子力の電気を使うのか」と語った言葉が胸に突き刺さります。ビキニの人たちが島の美しいメロディーに合わせながら歌います。「わたしたちの島と生活は奪われた」。

1995年のもんじゅナトリウム火災事故隠しに対応して、1996年に開催された第2回原子力政策円卓会議には坂田静子さんが市民代表として出席していました。「原子力基本法、つまり国策を見直すべきではないか。国策も誤ることがあります。わたしたちの世代は身をもってこれを経験しました」。

この映画に出てくる核の被害を受けた人たちの姿を通して今の日本、フクシマが見えてきます。

「終わらない」のか「終わらせるのか」はわたしたち市民にかかっているのだと感じさせる映画でした。

上映後は坂田雅子監督への質疑応答もあり、活発な意見が交わされました。かいつまんで以下にご紹介します。

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監督に質問する参加者

-日本の現状、脱原発の現状について

監督:反原発、原発ビジネスなど立場によって言うことが異なり、一人ひとり、掘り下げないとそれぞれ考えていることが見えてこない。

-日本では原発に変わる代替エネルギーは進んでいないのか?

監督:太陽光エネルギー発電も進んでいたが、再生可能エネルギーの制度が変わり、電力会社は再生可能エネルギーの買取義務がなくなったので、高くつく再生可能エネルギーの買い取りを電力会社が避けるようになり、その発展を阻んでいる。(*買取にかかった費用は一般電気料金に上乗せしているので、結局消費者が負担している)

-なぜ、世界で60年間原発が稼動してきたのか?

監督:それこそ自分に問いかけてきたものでこの映画を撮る原動力になった。

-フランスにもドイツのように反原発運動をしている人たちがいるのか?

監督:少数だがいる。少数でもがんばっていることに意味がある。フランスでも再生可能エネルギーが発展することを願っている。

 

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*上映会の際、坂田監督へのカンパ、会場費、Sayonara Nukes Berlinの活動費のため呼びかけた
カンパ(事前、当日)は、合計337,60ユーロでした。ご協力いただいたみなさまにお礼申し上げます。
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今回上映会場となったACUD  http://www.acud.de/
*「わたしの、終わらない旅」DVD版は、amazonなどで購入することができます。