鎌田慧さんに聞く「核エネルギーと民主主義」

福島の原発事故から5年、チェルノブイリの事故から30年の節目の今年、この2つの事故日である3月11日から4月26日までの7週間の間、ベルリンで「核エネルギーと民主主義」をテーマにProtestival2016を開催します。そこで様々な職業人の立場からいただいたテーマに沿ったインタビューを今日から連載していきます。第一回目は鎌田慧さんです。

12月22日都内のカフェにて
12月22日都内のカフェにて
「原発は民主主義の対極にある」とずっと言ってこられた鎌田さん。311よりずっと前から日本の核エネルギーと民主主義のたたかいを見てきました

鎌田 原発というものはもちろん原爆からできてきたんですけど、きわめて大きな破壊力のある兵器を平和利用にするんだという形で日本人を洗脳したんですよね。日本人は2回もの体験があって原爆の脅威をすごくよく知っているわけですから、人類にとって最も悲惨なエネルギーを平和利用するためには、そういう教育をものすごくやられたわけです。アメリカからヒロシマとかいろんな地域で核を平和利用するんだっていうメッセージですね。アイゼンハワーが1953年の国連総会で提唱した“Atoms for peace”*¹って平和のための原子力、核の平和利用、それを読売新聞などが博覧会なんかをしてずうっとすり込んできたわけです。もともときわめて悪魔的なものを平和のためにと言い換えて、残っているウランなどを日本に売ろうと言うのが当時のアメリカの作戦。そうして日本で原発が作られるようになった。しかし平和利用といっても日本ではやっぱりなかなか信用が得られなかった。各地では反対運動が起きた。原発は原爆と同じで怖い。いくら新たに洗脳しても感覚的に怖かった。それを払拭しきれないうちに作っていく中でまずお金を配った。60年代から作りはじめ、一挙に作られたのはオイルショックの後、田中角栄の電源三法*²を契機にお金を配る、補助金を出すっていう政策。言いたいのはずうっと反対運動があったってことです。反対運動が負けたところは作られて、勝ったところは作られなかった。日本の場合は9電力、電力会社が九つしかないから、そこに上がってくる電力料金は膨大な量なんです。完全独占です。それを資金にまた地域に配るとか、お金なんですよ。政府のお金と電力会社のお金が配られて原発が作られてきた。存在自体がきわめて非民主主義的な存在ですよね。いつ爆発するかわからない点でも人類、命にとっても非民主主義的だし、建設過程でも非民主主義的なんです。例えば漁業協同組合の組合員の三分の二が賛成すれば原発の周りの漁業権を放棄するんです。そのためにも幹部のお金の買収などがある。その議会の賛成派っていうのはほとんど工事をやる人たちなんです。そういう地域の民主主義とか、議会の民主主義とか、協同組合の民主主義とかそういうのをぜんぶ潰してきたんです。どれだけ被害があっても、地域では原発再稼働してくれって言う声が上がってきているし、地方自治体も県もぜんぶ、民主主義が機能していないんです。住民が反対しても地域では稼働できるようにもなっているんです。地域にお金が流れるっていうことなんです。というわけでお金が配られるところでは民主主義が破壊された。それから秘密でよくわからない、事故が発生してもよくわからない、運転過程の非民主主義。

「存在自体がきわめて非民主主義的な存在」

―事故から5年目、鎌田さんはこれからどんなことを考えていますか

鎌田 これからの問題としては被ばく労働者が膨大に発生していますから、この方たちの病気などがどれだけ明らかにされていくか。日本では原発は40年稼働しているけれど、被ばく労働者として認定されたのは11人*³しかいないんですよ。これはJCO*⁴の3人は外してるんです。でも白血病や癌で亡くなっている労働者はいっぱいいる。これからも現れるのはわかっているが認定されるかどうかはわからない。それから甲状腺がんの子どもたちは、150人も現れているけど、行政が否定したりしているわけです。これからいろんな形で裁判なんか始まってくるんですよね。僕らは反原発運動、原発の再稼働の反対運動やって来て、被災者の住民の方を見る時間がなかなかなかった。こないだ被災者の方々に来てもらって集会を開いて、これからどうしていくか。医療、生活保障、賠償金だとか、これから経済的な圧迫が増すことがわかっている。労働者の方も裁判にまでもって行くっていうのは大変な事です。原発社会には、民主主義などなかった。だから、これからは地域の民主化運動が必要になります。そういう運動をこれから力入れてやっていこうと考えています。裁判*⁵もいろいろな裁判が始まっています。これからはもんじゅの裁判もあるわけです。そういういろんな運動体をつなげて一緒にやっていこうと努力してきました。僕らはさよなら原発の大きい集会を今までにやってきて、福島の方々にも集会に来てもらっているし、フクシマを忘れないってスローガンにしているんだけど、それをもっと具体的にきめ細かくやって行こうって。

―311以降の反原発運動の広がりをどう見ていますか

鎌田 今までも原発反対運動って言うのはずうっとあったのです。しかし地域の住民の反対運動がどんどん崩されてきました。地域の労働組合が建設反対の集会などに組合員を集めたけれど、そんなに広がらなかった。。例えば東京で集会を開いても最高で1万ちょっとぐらいの規模。そこに3.11があって、運動が急速に拡大した。とにかく、大江健三郎さん、坂本龍一さんなどいろいろな方に呼びかけ人に加わってもらって、さよなら原発運動を始めました。最初の集会は6万人ぐらい、翌年16万人が集まった。今までは脱原発にする、前の方ばかり見て進んでいたから、被災者の生活とか子どもの被ばく、労働者の問題とかに手が回らなかった。それがこれからの課題だと考えてます。

―私たちにこれからどんな未来が見えますか

鎌田 歴代の首相経験者のうち、村山、小泉、細川、鳩山、菅、野田首相など、賛成派から原発反対派になった。自然エネルギーも今まで馬鹿にされて来たけれど、これからどんどん増えていくでしょう。そういう風に転換していくわけです。目標が決まれば早まるんです。いろんな運動とかいろんな努力を積み重ねて、世論的には7割から8割ぐらいが原発いらない。あとは政府が決定すれば良いだけ。自然エネルギーも始まったばかりでまだまだ弱いが、社会がそうなっていけば企業も付いてきます。ドイツが脱原発に進んでいるし、ドイツだけが突出して進んでいるわけではないし、世界的に自然エネルギーに向かう状況が整ってきているわけです。僕らの運動も脱原発と自然エネルギーを広めるって言うのと、両方やってる。いろんな試みも宣伝していく必要がある。脱原発と、自然エネルギーと、今までみなさんに起こったことをどう解決していくか、それぞれのネットワークと協力してやっていきたい。

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鎌田慧 :(かまた さとし、1938年6月12日 – ) 日本のルポライター、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。「隠された公害 ドキュメント イタイイタイ病を追って」「自動車絶望工場」「原発列島を行く」など、政治、労働、いじめ、原発にまつわる著書多数。「六ヶ所村の記録」で毎日出版文化賞受賞。東京新聞に「本音のコラム」を連載中。
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補足:
*¹平和のための原子力 /Atoms for peace
ドワイト・D・アイゼンハワー元米大統領が1953年にNYの国連本部で開催された国連総会で行った演説。
在日米国大使館HP http://aboutusa.japan.usembassy.gov/j/jusaj-majordocs-peace.html

*²電源三法
電源開発促進税法、特別会計に関する法律、発電用施設周辺地域整備法の三法のこと。主な目的は、電源開発が行われる地域に対して補助金を交付し、発電所を含む電源の開発の建設を促進、または運転を円滑にしようとするもの。電源三法による地方自治体への交付金を電源三法交付金と呼ぶ。

*³被ばく労働者11人
1991年から白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫で2011年7月までの間に11人が原発被ばく労働者の労災認定されています。1999年のJOC臨界事故では高線量被曝した3人が労災認定されています。
ヒバク反対キャンペーン HPより http://www.jttk.zaq.ne.jp/hibaku-hantai/hibakuroudou.htm

*⁴JCO
1999年9月30日茨城県那珂郡東海村にある株式会社ジェー・シー・オー(住友金属鉱山の子会社)の核燃料加工施設で発生した臨界事故で、至近距離で中性子線を浴びた作業員3名中、2名が死亡、1名の重症者、ほか667名の被曝者を出す。日本国内で初めて事故の被曝による死亡者を出した。一般に東海村JCO臨界事故 。

*⁵現在係争中の原発と人権にまつわる一部の裁判はこちらでご確認ください
・原発と人権ネットワーク
被害者訴訟、脱原発訴訟 http://genpatsu-jinken.net/index.html
・脱原発弁護団全国連絡会HP
全国脱原発訴訟一覧 http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/list/
・東電株主代表訴訟 http://tepcodaihyososho.blog.fc2.com/

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