木内みどりさんに聞く「核エネルギーと民主主義」

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12月23日都内のカフェにて

福島の原発事故から5年、チェルノブイリの事故から30年の節目の今年、この2つの事故日である3月11日から4月26日までの7週間の間、ベルリンで「核エネルギーと民主主義」をテーマにProtestival2016を開催します。そこで様々な職業人の立場からいただいたテーマに沿ったインタビューを連載中。第二回目は女優の木内みどりさんにお話を伺いました。

木内 政府のやり方は本当に汚いと思うんですよね。原発再稼働するのも核を持っていたいわけじゃないですか。プルトニウム一杯ためこんで、ロケット技術もそれの一貫ですよね。日本は核を持っていないと言っているけどいつでも核にできる材料も技術も準備万端。やり方が汚いですよね。どうしてみんな怒らないんだろうって不思議なんです。でも、少なくともわたしは自分の目で見て、自分が考えて、人の考えと違ってもぜんぜん怖くない。千人が千人、一万人が一万人左に行ってもわたしは嫌だったら右に歩いて行きたい。一回きりの人生の手綱を誰かにゆだねたり、取られたり、牛耳られたりするのはまっぴらなんです。

―311以降、木内さんは“開眼された”という事ですけど、それまでにこうした運動に関わりを持っていましたか

木内 何にもなかったです。デモなんかに行き交うと迷惑だなー嫌だなーうるさいなーちっとも素敵じゃない、逆効果じゃないかって思ってました。政治は汚い嫌なものだって思い込んでました。でも311以降そんなこと言っていたら自分の命に係わるって思ったんです。よくよく見てみたら、この国はでたらめで嘘ばっかりだぞ、新聞は嘘を書くし、NHKも嘘を言うし、多くの大人は全く本当のことを見てないっていうことに気が付いた。やっぱりこの国の一員なんだ、その一員としての権利も欲しいし、義務もちゃんと果たしたいと思いました。日本国民のひとりなんだと初めて自覚しました(笑)

従来のデモや運動のやり方に、ちょっぴり疑問を抱いた木内さん

木内 偶然そこにいるだけの人々に、私たちは正しいんだ、アンケートを書きなさい、署名をしなさいみたいな上から目線では人の心は動かない。今までの古いやり方に嫌悪がありました。だから違うやり方違うやり方って考えて探して試して。団体行動が苦手なのでどこにも属したくない。いつもいつもひとり行動です。誰にも強制されたくないし、したくない。選挙の応援でも自分で交通費や宿泊費用を払ってきたから、誰に何を言われても自分でいられます。

―脱原発を願って、候補者の応援演説に駆け付けた木内さんを待っていたのは、続く演説日に応援のない現実。木内さんはご自身の信念のために、なんと311以前はうるさいなあと思っていたその選挙カーにも乗る事に。そして選挙の敗北を受けての憂鬱。そんな思いを重ねて、この5年間、木内さんがブレずにいたのはどうしてでしょう。

木内 ほとんど絶望の連続だったのだけれど、でも、ふと気が付いたのです。素晴らしい方たちと知り合いになれてるって。友だちになれたんです。年も知名度もバックグラウンドも関係ない「友だち」に。人生は本当に短いし、出会える人も限られているのに、素晴らしい方たちと出会えた。これからもいいと思ったことはいいと思って動きたいし、誰にも評価されない、誰の目にも止まらなくてもいい。だってものすごく面白いもの。お金なんて役に立たないことが多い、有名の名前って効果には表も裏もある。もうね、大きな会社のものとか巨額のお金をかけて宣伝してるものとか、生理的に嫌いになっちゃった(笑)

―お金を使って宣伝しなきゃいけないようなものにはろくなものがないと思うようになった、そういうことからも、わたしはわたしの好きな生き方しかもうしない!ということにより研ぎ澄まされてきたこともありがたいと思うと言う木内さんが5年目を迎えて、これからしていきたいことは

木内 今つかんでいるものはもう絶対に離さないでいたい。ラジオも引き受けたいし、作文が好きだからコラムも書いていきたい。

―木内さんがブログに書いた11歳の少年との邂逅が素晴らしかった

木内 本人が特定されないように一生懸命書きました。わたしと過ごした二泊三日、ふざけてばかりでしたが、帰宅した後、彼は自分からデモ情報を調べ、デモに出かけたそうです。「アベ政治は許さない」ってあのスローガンを両手で突き出してる写真を見たときは涙出ちゃって311以降、変化に変化した少年の暮らし、彼なりに見聞きしてきたことへの怒りみたいなものがはじめてそこで抵抗という形になったんだと思います。誰かとわたしが出会ったことで何かが始まる、その人も変わるしわたしも変わる。そんなことが生きがいになってきました。

木内さんは誰だって、みんな好きに生きればいいと言う

木内 時々なんでそんなに一生懸命なの?って聞かれるんです。で、考えたら、わたしの自分の得じゃないから一生懸命できるんじゃないかと、自分のことだったら自分に自信がないからそんなに人にお勧めできない。自分のことならここまで一生懸命になれないと思う。だけどこうあって欲しいと思うことのためには一生懸命になれる。本当に腹が立ったり、悲しかったり、こんなものが通っていいんですかっていう怒りがある限りは一生懸命やれると思う。だからかデモに連れて行って言う人が現れたり、行動を起こし始める人が増えていく。経産省前で学生がハンストしていることを知った時、労いの言葉をかけたいとかけつけると、ベビーカーを伴うお母さんから「テレビに出ている方ですよね、どうしてここにいるんですか」と言われて、ありがとうぐらい伝えたかったというと、わたしも不安でしょうがないから来たと言う。そんな小さな出来事がきっかけで彼女の中で何かが変わった。その後、できる範囲でデモや集会に行ったりしていますと連絡がありました。あの時の数分間、お互いがお互いを励まし合った、たったそれだけのことなんだけれど、こういう小さいことって実は大きいんだと思うんです。確実につながっているって実感できる。

―いかに生きていくかも大事だけど、いかに死んでいくかもけっこう難しい時代にいると言う木内さん。15年後どうやって死んでいくかがいちばん大きなテーマだと言う

木内 広河隆一さんの「人間の戦場」という映画を見て、本当に素晴らしいと思った。広河さんが絶望しないでやってるんだからわたしが絶望してどうする!って。

広河さんの映画の話が出たので、3月にベルリンで行われるプロティスティバルでも広河隆一さんと樋口健二さんの写真展を企画していること、メンバーが展示にかかる経費の事で奔走中(12月当時)だが、必ずやりますと言うと、木内さんが突然「1万円寄付する!」と明るく寄付を申し出てくださった。その場で笑顔でお財布から1万円を出す木内さん。「写真はとにかく力がある、やっていただきたい!広河さんは本当に素晴らしい!」と真っ直ぐな瞳で木内さん。わ、すごいものをもらってしまった!

木内 広河さんが映画の中でおっしゃっているけど、DAYS JAPANの編集長を降りられた。理由は健康問題で、発作があったら3時間半以内に病院に行けるところにいないといけないと言われた。編集長は机と椅子があればどこにいてもできるけど、ジャーナリストはそうはいかない、両方は無理、彼はジャーナリストを続けたいと思った。そこで誰かやってくれと手を挙げてもらって、手を挙げた人をみんなで選挙で選んだ。それで入社1年目の女性に決まったんです。画期的でしょう。

―ここまで一気に聞いて、思わず、ちょー民主主義!と合いの手、うなってしまった

広河氏はもう新しいテーマで撮影に入っているそう。日本では時の権力に逆らってきた無名の方がたくさんいる。そういう人を訪ね歩いて掘り起こしたいと撮影旅行に出ている。自分に残された時間でやりたいことをやってる。わたしもこの道に行こう!と思ったと活発な木内さん。

私は木内さんのブログが始まって以来一読者でもあるのだが、新聞などでも必ず一般のコメントを読む癖があり、SNSなどでみどりさんに寄せられる読者のコメントもよく読む。木内さんの何気ない一言が人の心に響くのだ。木内さんはとにかく正直で裏表のない人、やりたくないことはしない、ありのままを思うままに書いている。書かれたことはぜんぶ本気だ。それがおのずとみんなの深いところに伝わるのだと思う。

©Tsukasa Yajima
©Tsukasa Yajima

昨年のベルリンのかざぐるまデモで先頭を歩いた木内さんにいただいた経産省前テントとおそろいの”福島を忘れない!”の旗で、脱原発の輪がまたひとつつながった。

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木内みどり(きうち みどり、1950年9月25日‐):日本の女優。’65年劇団四季に入団。初主演ドラマ「日本の幸福」(’67/NTV)から多数出演。映画は、三島由紀夫原作『潮騒』(’71/森谷司郎)、『死の棘』(’90/小栗康平)、『大病人』 (’93/伊丹十三)、『陽だまりの彼女』(’14/三木孝浩)、『0.5ミリ』(’14/安藤桃子)など。3・11以降、脱原発集会の司会などを引き受け積極的に活動。マガジン9で「木内みどりの発熱中」を不定期連載中。

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補足:
広河隆一:(1943年9月5日 -) 日本のフォトジャーナリスト。戦場カメラマン。2004年、廃刊になった報道写真誌「DAYS JAPAN」を再刊以来、最近まで編集長を務めた。
12月19日より全国順次公開上映中、長谷川三郎氏が監督し、広河隆一氏を追ったドキュメンタリー映画「人間の戦場」公式サイトhttp://www.ningen-no-senjyo.com/

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Protestival 2016

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