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最終処分の話をしようや (10): 付録 4: 最終処分の保存期間10万年の根拠は?

前回は線量の単位のシーベルトについて,それが測定方法に注意が必要なことを述べました.また,放射線にはいくつも種類があること,その修正係数の違いなどから,国によってもシーベルトは異なるものになることがあることを述べました.いろいろと難しい話だったと思いますが,自分や家族の安全を判断するには必要な「(生体が影響を受ける)放射線の強さ」についての話でしたのでできるだけ詳しく調べたつもりです.

今回は最終処分の話によく出てくる10万年という保存期間の話についてです.いったいこの期間にはどんな根拠があるのでしょうか?

採鉱時のウランの安全性/危険性

最終処分での放射線のレベルと経過時間との関係では,採鉱時のウランのレベルを基準としています.しかし採鉱時のウランの放射線レベルが安全なのか危険なのかという話がなければその基準がいいのかどうかわかりません.自然のものだからいつも大丈夫というわけでもないので,この安全基準というのはどういうものかという疑問がでてきました.例えば毒蛇や毒茸,火山地帯などで噴出するガスなどは自然にあるものですが,自然にあるから安全というわけではありません.

Wikipedia の劣化ウランの医学的危険性の主張と反論を見ると,日本の文部科学省は劣化ウランの毒性は身の回りの海水や土砂中に存在するウランと同じ又は小さい」(平成14年11月)と発表しています.しかしこれではウランそのものの危険性がわからないので,比較になりません.一方,劣化ウランの危険性の項を短くまとめると,「劣化ウランは重金属であり,重金属中毒の原因となる.その毒性は砒素と同程度である.」という主張があります.また,アメリカ政府とWHOは危険性に対する証拠は不十分であると反対しています.ただし,子どもは口にしないよう WHO は警告しています.またアメリカの法律では劣化ウランは有害物質に指定されており管理下に置かれなくてはいけません.

どうもわかりにくいのですが,危険という主張の方々がいる一方,そうではないと主張される方々もいます.危険とは言えないと主張する方々の意見をまとめると,劣化ウランは危険ではないが,有害物質であり,法的に管理下に置くべきものであり(米政府),子どもは口にしてはいけないものです(WHO).そして,自然にとれるウランは,この劣化ウランと同程度に安全(文部科学省)か,それよりも危険な毒性を持つということだと思います.これに関しての議論は(Wiki [1])などをご覧になって御自身で御判断下さい.

また,燃料 1トンあたり 1000 GBq 相当,つまり 1GBq/kg (=10億ベクレル/kg)というのはかなり大きな値ですが,燃料 1トンあたり相当というものの意味がはっきりしません.食品の基準が 100 ベクレル/kg というようなレベルなのに,10億ベクレル/kg というのはとてつもなく感じます.

1つはっきりわかることは,核燃料の最終処分ではこの10億 ベクレル/kg になるまでに,現時点ではこれまでの記事の中にあったように,10万年を越える年月を必要とするというグラフがあることです.

では10万年後には安全なのか,というと,そういう議論は別にしていないことに気がつきます.10億 ベクレル/kg は食品の基準から言えば1000万倍の濃度ですから,これは私の素人判断ですが,安全とは言えないと思います.10万年という数字をよく見るのはどういうわけなのか,今後も機会があれば調べてみようかと思います.

おわりに

今回で最終処分の話は一度終了です.しかし,最終処分の話は現在も進行形のものです.今回勉強会を含めて私自身いくつか考えました.核のゴミは誰がどう負担するのか. 残念ながらこれは我々と我々の後の世代が既に持ってしまった負債です.現在の技術では処理が困難なゴミは,少なくともその技術のめどがたつまでは増やすのをやめるべきだと私は思います.負債や借金を先送りにしても,やがて支払わなくてはいけなくなります.我々は今日のために万年という単位の負担を子孫に押しつけ,国の未来の発展を妨げる世代になるのだろうか.そんなことを考えました.皆さんは何をお考えになりましたか? ここまで読んで下さった方,何かの参考となれば幸いです.

参考文献

  1. Wikipedia, 劣化ウラン: 医学的危険性の主張と反論, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A3%E5%8C%96%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%B3, (Online; accessed 2014-12-21)

最終処分の話をしようや (9): 付録 3: 測定方法で放射線の強さは変わること,放射線には種類があること

前回は放射能と放射線の違い,そしてそれについての単位の話をしました.それらは細かい話であまり違いがないように思うかもしれませんが,実はずいぶん違うもののため,どんな単位の値が基準になっているかを知らないと安全の判断を誤ってしまうことになります.日常では「割合」と「そのもの」は区別がしやすいですが,放射線などはなかなかなじみがないので難しいのだと思います.たとえば,速さと距離はそのような「割合」と「そのもの」の関係があります.50km/h (1時間に50km)の速さと 50km の距離というものを同じと間違える人はあまりいないと思いますが,100 mSv/h (1時間に 100 mSv)と 100 mSvとなるとなじみがないのでつい混乱してしまうことがあります.今回はシーベルトの話もしたいと思います.そして放射線量はその場の明るさと同じように,どう測定するかによって違うという話もありました.この続きを今回はお話ししていきます.

測定された放射線量の意味についての注意

私が 1 つ注意すべきだなと思ったことは,放射線量というのは場所で異なるものですから,それが測り方によっても変化することです.測る前に除染すればそこでの線量は落ちます.また,線量計の置く高さにもよって線量は変化します.線量の高いホットスポットはもちろん注意するべき場所ですが,その一ヶ所だけを問題にして,それを一般化しすぎるのも問題です.たとえば,一ヶ所のホットスポットのみをもって,この地域は全体的に危い,というような話はまたおかしいのです.その場合には危険性がある可能性があるということで,全体が危険かどうかはわかりません.場所によって線量の変化が大きいということは,ある少数の定点のみでの観測値では,測定の網が粗すぎて漏れがおきてしまうということです.線量の測定というものはこのようないくつもの注意が必要だと思います.もちろん,何らかの理由で,測定は細かくもしないし,正確にしていかないということがあれば,私としてはそのような危険の可能性のある所には近づきたくありません.しかし,十分に細かく測定をして(何をもって十分かも問題ですが),ある地域にほんの数カ所しかホットスポットがないとわかればそこを避けることができます.また,線量の監視を連続的に続けるのであれば,新たなホットスポットができてもみつけて避けることができます.

つまり問題は常にちゃんと安心できるだけの測定がされているかどうかです.もし危険性のある町で,測定が町に1〜2ヶ所となると,危険か安全かはどうとも言えないでしょう.そうなると私の心情としては避けてしまうことになるでしょう.

たとえば,もし駅前などで測定されている場合,そこを利用する人が多いという意味では良い測定点ですが,そこで掃除(除染)が頻繁にされているということがあれば,ちょっと離れた場所の線量とは異なるものを測っているかもしれません.ですから,今日の線量,というものが示されている場合,それがどこでどのように測った値なのかがわからなければ,あまり意味がないことでしょう.ある特定の場所だけ除染して測定してはその周辺の代表点として使えないでしょう.また反対に,もし人がある特定の場所にいなくてはならないような場合,その場所を覆って線量がどうかを測定することには意味があるでしょう.

もし放射線とつきあって生活することを決めたのであれば,どこかの線量というものが単に高い低いということよりも,何がその場所で重要なのかを考えることで,何をどう測るべきなのかが見えてくると思います.つまり,「測定された放射線の意味」を考える必要があると思います.あるどこか一ヶ所でこれだけ強かったということは,その近くに住み,その場所にアクセスする人には重要な情報かもしれませんが,それがある地域全体のことを示しているとは限らないからです.

この場合には測定する側とそこで暮らす側との信頼関係も必要になってきます.そのあたりを無視され,情報がでてこないとなると,各自が自分で判断できなくなるため,放射線とつきあって生活するということは難しくなると思います.

放射線には種類がある (シーベルトについて)

化学の入門を調べた方は,放射線には種類があることにもお気づきでしょう.放射線には α線,β線,γ線,などがあります.そして生体の受ける影響は,同じ吸収量(単位: グレイ)でも種類によって異なります.たとえば,α線の方が同じエネルギーの吸収量であっても生体にはより危険とされています.ですから,同じグレイ値では危険性が判断できません.これを補正しようとしたのがシーベルトです(図 9.1).補正する必要性については必要だということであまり議論はないようですが,その補正値がいくつか,たとえば,α線はγ線の何倍危いのか,という補正値にはいくつか議論があります.生体への危険性というのは重要なものである一方,その影響は複雑で正確にはわかっていないようです.そこでどうしてもおおざっぱな近似になります.そのためこの補正は,国によっても異なります.日本ではシーベルトの修正係数は,γ線,β線の影響を 1とすると陽子線は 5,α線は 20 となっています.これをグレイにかけたものがシーベルトです.シーベルトは生体への影響を考えていますが,注意することは,このように係数をどう決めるかで変化する量ということです.なぜ生体への影響を知ることが難しいかにはいくつか理由があるようです.たとえば,詳しい人体実験を行うのが難しいこと,年齢や性別などにも影響される可能性があること,などです.同じ攻撃を吸収しても(グレイ),その種類によってはダメージが違ってくるので,それを考慮した値がシーベルトです.

ちょっとゲーム好きな人にしかわかりにくいたとえかもしれませんが,先のゲームの例えに戻れば,異なる種類の放射線にさらされるということは,異なる属性の魔法攻撃,水の攻撃や火の攻撃など,を受けている状況と言えるかもしれません.それは同じ魔法の力(マジックポイント)を使っても効果が相手や場合によって異なることに似ています.しかし最終的にはヒットポイントがどれだけ減ったかが重要なのです.そのための補正がかかっているものがシーベルト,と考えることもできるでしょう.ゲームに詳しくない人にはわかりにくいたとえだったかもしれません.

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図 9.1 放射線には種類がある (α・β・γ・中性子線,...)

また,同じエネルギーでも,短期間で大量に浴びた場合と長期間で少しづつ浴びた場合には生体への影響は違ってきます.ですから,昨日と今日のシーベルトをたしていくら,というのは問題があるはずですが,現在の所は私達にはシーベルト以上の良いものさしがないので,シーベルトが最善の単位として利用されているようです.人間には影響に強い線形性があるわけではありませんが,シーベルトは線形性があると仮定しています.と,線形性と言ってもわかりにくいかもしれませんが.たし算が使えるという意味に考えればとりあえずは良いでしょう.

たとえば,人間は醤油を一気に1リットル飲めば命が危険ですが,毎日少しづつ料理に使って,一ヶ月で1リットルならば(ちょっと使いすぎとは思いますが),一気飲みほどの危険性はありません.一方,ある種の毒は排泄されずに蓄積され,たし算が効いたりしますし,特定の伝染病では,ほんのわずかでも爆発的に効果があり,毎日のたし算以上の効果があるものなど,線形性の効果を及ぼすものというのは限られています.

しかし,シーベルトは毎日少しづつ浴びた場合と強いものを一気に浴びた場合でも同じであり,たし算ができると仮定した単位というのは知っておいても良いと思います.こう考えると,シーベルトは長さの単位のメートルほどには強固な単位ではありません.

ここで 1 mSv/y というものと 1 mSv の違いについて述べておきます.1 mSv/yというのは1年間そこにいると 1mSv の線量を受けるというものです.ですから,1mSv/y の場所に 2年いれば,2mSv となります.現在の日本の強制避難勧告の基準は,20mSv/y です.もし 20 mSv/y の場所があり,線量が変化しない場合にはそこに 5 年留まれば,100 mSv となります.この mSv/y と mSv の違いには十分注意して下さい.たとえばあなたが 10 mSv までなら大丈夫と判断した場合,1mSv/y の場所に 10 年を越えて住めば10 mSv を越える可能性があります.特に若い人達や子どもは,放射線の影響をより受けやすいという注意もありますが,より長く滞在する可能性も考えなくてはいけません.年間10万円を毎年支払うことと,1回だけ10万円を支払うというのは,意味が違います.この例では,mSv/y と mSv には毎年払いと1回払いの違いがあります.

さてここでようやく廃棄物の基準にはシーベルトとベクレルがあるという話ですが,廃棄物が一種類の放射性物質である場合には,放射性物質ごとにベクレルで決めるのが合理的でしょう.放射性物質ごとに危険性は違いますし,半減期も異なるからです.ですから,核種ごとにベクレルでの廃棄物基準があります.しかし,これが混ざっていたらどうなるでしょうか.廃棄物を純粋な元素毎に分離するのは手間のかかることでしょう.ですから,そのような場合には,特定の手法で線量を測定し,線量としての基準で廃棄物かどうかを決めるということになるでしょう.その場合にはシーベルトを使うということになるかと思います.

報道などでベクレル値かシーベルト値なのかを見た際には,この違いを考える方が良いのではないかと思います.セシウムのベクレル値で廃棄物を決めている場合ですが,そこには他の核種はないのでしょうか.(例: [1])たとえば,ストロンチウム90 は入っていないのか.などの疑問が起こってくるこ
とと思います.

また,測定器が何を測れるのかも注意が必要です.γ線量のみを測るものが多いということですが,放射線はそれだけではありません.

化学入門では元素の後につく質量数が何かという話がありました.ですから,「放射性セシウム」と言われた場合,セシウム 134 なのかセシウム 137 なのかの違いがあります.これが興味ある理由は半減期がセシウム134 は2年程度,セシウム 137 では 30年程度と異なるからです.セシウム 134 なら20 年たてば,ベクレル値は 1000分の1以下になるのに,セシウム 137 なら半分程度にしかなりません.ほんの少し,高校の化学を勉強するだけで,こういう違いがわかってくると思います.そしてその目で報道を見るといろいろとわかってくると思います.報道する方も短い時間に様々な説明をしなくてはいけないので,基本的な知識については時には入れられないことも私は理解できます.この豆知識があなたの目を少し変える,報道が何を言っているのかを理解する助けとなることを希望いたします.

おそらくこれは細かいことではあるのですが,放射線の安全性の基準は様々な条件: 組織,国,時などによっても変化する [2] [3] ものです.たとえば,日本の首相官邸の「みなさまの安全確保」 [4] によると,避難すべき期間的避難区域は 20mSv/y が基準であり,ウクライナの基準では5mSv/yが基準[5] となっているなど,違いがあります.これはどこが間違っているというものではなく,それぞれの基準にはどれだけのリスクを考慮しているという前提条件があります.その前提条件はその時の政府などが判断しています.その政治的判断の違いがあるために,安全基準は国や組織などで異なります.

結局,放射線のある所,何かのリスクは必ずあります.絶対安全はなく,しかし,一方で十分受け入れられるようなリスクもあるはずです.政府はある仮定に基づく放射線のリスクの基準となる値を文書で我々に提示しています.問題はこのリスクを取るかどうか,前提条件が妥当かどうかの判断が我々にある場合が現時点ではいくつもあるということです.(ただし,その選択が何からの形で強制され,実質的に選択できなくなることがあれば私はおかしいと思います.)安全性を考えるためには,まず,私達はその基準となる値を理解し,その仮定の妥当性を検討しなくてはいけません.それでも危険性は最終的に確率でしかない部分もあり,それについては市民として妥協できるのか,政策を変化させる必要があるのかは個々の判断となるでしょう.

ここで述べた単位の解説はその判断基準となる一歩です.そんなに簡単ではないとは思いますが,あなたの判断の手助けになることを希望します.

次回

今回はシーベルトの単位や線量が測定方法などによって変化すること,放射線の種類などちょっと技術的な話でした.私自身,こんなに難しいことを考えなくてはいけないということ自体が何かおかしいとも思います.しかし,自然には通常ない危険性が既に拡散してしまったのですから,それに対抗するためには新しい概念を知らなくては,その危険に無力になってしまいます.できればそんな新しい概念を知らなくてもよい,もっと他の生産的なことに時間を使いたいと思ってもある意味,開かれたパンドラの箱はもう閉じられませんので仕方ありません.また,安全基準は国際的なものもありますが,様々なものが国によって違うことも調べるとわかりました.日本の基準に関しては参考文献にあげておきますが,国によって基準が異なることや,また,基準値が変更されることもあるというのはちょっと気になるところです.

次回は最終処分でどれだけ核燃料などを安全に保存しておかなくてはいけないのかの時間として良く言われる「10 万年」にはどんな根拠があるのか,ちょっと考えてこの話を終わりにしたいと思います.

参考文献

  1. 河北新報, 宮城県知事、詳細調査受け入れ 最終処分場, http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201408/20140805_11016.html, (Online; accessed 2014-12-26)
  2. 厚生労働省, 食品中の放射性物質への対応, http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/shokuhin.html, 2014, (Online; accessed 2014-12-21(Sun))
  3. 厚生労働省, 食品中の放射性物質の新たな基準値を設定しました, http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329_d.pdf, 2014, (Online; accessed 2014-12-21(Sun))
  4. 首相官邸, みなさまの安全確保 http://www.kantei.go.jp/saigai/anzen.html/, 「計画的避難区域」及び「緊急時避難準備区域」の設定について, http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110422004/20110422004-2.pdf, 2011, (Online; accessed 2014-12-21(Sun))
  5. オレグ・ナスビット, 今中哲二, ウクライナでの事故への法的取り組み, http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/saigai/Nas95-J.html, 2011, (Online; accessed 2014-12-21(Sun))

最終処分の話をしようや (8): 付録 2: 放射能・放射線について

前回は,可能な限り安全性を自分で判断するためにいくつかの資料の参照先を書きました.もちろん,もっと他にも資料があると思いますので,御自分でお探しになって欲しいと思います.ここではそれらの資料を読む際に使える基本的用語などについて,補足していきたいと思います.

放射能・放射線について

前回紹介した Wikpedia や化学入門などの解説をご覧になられた方は原子というものが何かとか,放射線とは原子核の一部の陽子や中性子であったり,高エネルギーの電子であったり,あるいは高エネルギーの電磁波であったりということをご理解されたかと思います.これらが危険なのは,私達生命が生きていくために重要な私達の体の中の DNA 等を破壊することができるからです.どれだけ破壊するかというのは,放射線を放射する側のエネルギー,そして生体側がどれだけ吸収するか,などにかかわってきます.それは,どれだけ攻撃が強いのか,どれだけ守備が強いか,に似た感じです.これについて知るために,まずは,放射能と放射線と,その強さについての言葉について考えましょう.それを示す言葉がないと,なんだかわからない怖いもののままであったり,なんだかわからないから,権威の言うことを信じるしかないということになりかねません.そこで,ちょっと退屈かもしれませんが,放射能,放射線,ベクレル,シーベルトなどの言葉の意味をまとめてみます.

私がこれについて調べているうちに,放射能と放射線の関係は,光のアナロジーが使えそうだとわかりましたので,それを使って説明したいと思います.

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図1 電球と放射能のアナロジー

放射能というのは放射線を出す能力のことです.つまり能力のことです.先の攻撃,守備の話では攻撃側の武器の強さの話とも言えるでしょう.光で言えば電球は光を放射する能力がありますので,電球には光放射能があると言えるでしょう.そして光そのものが放射線に対応します.図 1 に電球と放射能の対応を示します.つまり放射能は物の性質,たとえば,電球の能力に対応します.注意して欲しいのは放射能は光には対応せずに,電球に対応するということです.電球は光を出す能力がありますが,光そのものではありません.私達は電球をつかんで移動して,箱に入れ,後で取り出すことができますが,光そのものをつかんで移動させて箱に入れて後で取り出すことはできません.音でもこれをたとえることができます.スピーカーは音を出す能力がありますので音放射能があると言えますが,スピーカーは音そのものではありません.放射能と放射線の違いはこれでおわかりでしょうか?

放射線は通常原子核が崩壊すると発生します.1回の崩壊でどのような放射線が出るかは原子核の種類によって違います.そして,ある単位質量の物質が1秒間にどれだけの崩壊を起こすかの数をベクレル(Bq)という単位で示します.これが攻撃武器側の強度です.単位質量というのは 1kg や 1t など,ある決まった量のことをちょっと難しく(しかし正確に)言っているだけで,何か決まった重さのことです.(正確には重さは場所,たとえば地球上と月の上では変化するものであり,質量は場所で変化しないものなので違うものです.しかし,とりあえずは重さと考えても通常はさしつかえないでしょう.)

どうして単位質量というものを考えるかというと,電球が沢山ついていれば明るくなるように,同じ放射能(Bq)の物質が多量にあればその分だけ多く放射線が出るからです.ですから,通常は 1kg の何かの中にこれだけの Bq という意味で,Bq/kg というような単位になっています.たとえば,ある放射性廃棄物 1kg あたり 8000 Bq とあれば,この 1kg の廃棄物は1 秒間に 8000 回の崩壊を起こします.そして,通常,それに対応する放射線を出します.これが 2 kg あれば16000 回の崩壊でその分の放射線を出すということで,量が増えると放射能であるベクレル値が増え,そして対応する放射線の量も増えます.しかし,1kg あたりは同じ 8000Bq/kg です.単位質量を言わずに,ベクレルしか言わないということは,それは全部の放射能の値になっているはずです.また,単位質量を小さくすれば,ベクレルの値はみかけ上小さくなります.1kg の放射性物質の出す放射線も,それを 1g にすれば 1000 分の 1 の強さになります.ある食べ物 1kgあたりの 1000 カロリーのものは,1g あたり 1 カロリーです.1000カロリーと1カロリーは聞いた感じではまったく違いますが,このようにまったく同じものを言いかえることができます.そしてここにはまったく嘘はありません.ですから細かい話のようですが,単位は注意しないといけません.同じカロリー密度の食べ物でも,2倍の量を食べれば2倍のカロリーになります.ですから同じ Bq/kgの廃棄物でも2倍の量があれば2倍の Bq になります.同じパーセントのアルコールでも2倍の量を飲めば2倍のアルコールが摂取されます.でも,パーセントは同じです.

何かの基準が Bq/kg の場合,元が同じ Bq/kg でも,他のものと混ぜて薄めることで基準値以下にするということが可能です.たとえば,8000 Bq/kg の廃棄物 1kg と,汚染されていない何かを 1kg 加えてよく混ぜれば,2 kg で 8000 Bqですから,4000 Bq/kg と汚染度が半分になったように見えます.たとえば汚染水を基準値以下にしたければ水を混ぜて薄めるだけで, Bq/kg で測った基準値以下にできます.もちろん汚染水が海に出れば薄まって基準値以下になるでしょう.それを言えばどんな水に解ける毒でも最初は海に投棄すればまず基準値以下になるでしょう.しかし,そのようなことを続けていけば公害となったことは過去にあったことです.ですからBq/kg の基準値以下の濃度なら良いというような議論には注意をする必要があります.私は以上の理由から,濃度だけではなく,どれだけの量を投棄するのかなどの情報も重要だと思います.このBq/kg という単位を理解することで,どういう情報が必要なのかがおわかりになったことと思います.たとえば,濃度しか言わない報道には注意が必要です.

放射線の量

ここまでの話で,直接に危険なものは,どちらかというと放射能ではなく,放射線そのものであることがおわかりでしょう.電球と違って放射性物質はスイッチを切れば放射線が出ないようにはできませんので,放射能を持つ物質に危険がないというわけではありません.しかし放射能を持つ物質を何かで覆って放射線を遮ったり,弱くすることはできます.ある放射能を持つ物質があっても,十分遮蔽されていれば,その周囲には放射線はなく,したがって生体の破壊が起こらないので,問題はありません.ですから,ある場所でどれだけ放射線があるのかは重要なことです.

そこで,ある場所にはどれだけの放射線があるかを考えるのが,放射線量になります.図 2 のように,光源から遠くに離れればその場の光(照度)が弱くなるように,放射線源から離れれば放射線量は弱くなります.また,放射線の測定では放射線のエネルギーそのものではなく,ちょっとややこしいのですが,吸収量を考えます.その単位はグレイやシーベルトです.吸収量というのは,同じエネルギーの放射線でも物体に吸収されなければ小さくなります.これは防御側の防具の性能がかかわってくる値です.安全性で問題になるのは,生体の受ける放射線の吸収量です.どれだけ吸収したかは,ある単位質量のものが吸収したエネルギーを基本とします.1 kg につき 1 J の仕事に相当するエネルギーが与えられた時に 1 グレイ(Gy) です.1 J (ジュール)の仕事とは何かなどは,中学,高校の物理の教科書などを参考にして下さい.イメージとしては,吸収量とはその場でどれだけダメージをもらったかに近いものと考えられるでしょう.

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図 2. 光の照度と放射線量のアナロジー

ゲームがあまり得意でない人にはよくないたとえかもしれませんが,多くのロールプレイングゲームでは同じ力で攻撃を受けても,装備や防御したかどうかによってダメージの蓄積,つまり,ヒットポイントの減り方は違います.重要なのはどれだけの攻撃を相手から受けたかではありません.どれだけヒットポイントが減ったかです.ここでは吸収量とはヒットポイントがどれだけ減ったかにたとえることができます.しかし本当に重要なのはヒットポイントの減少量ではなく,残りヒットポイントです.しかし,放射線に対する残りヒットポイントは人,年齢などによっても違うので吸収量だけでもまだ十分とは言えません.

次回

今回は放射能と放射線の違い,そしてそれについての単位の話をしました.また,単位質量あたりの Bq と,Bq の違いの話をしました.

単位質量あたりの Bq というのは濃度であり,それだけでは実際にどれだけの放射能を持つ物質があるのかはわかりません.ビールのアルコール濃度が 4% というだけでは,実際にどれだけアルコールがあるかわからないことと同じです.同じアルコール濃度のビールでも,100ml 飲むのか,1 リットル飲むのかでアルコールの量は違います.また同じ量のアルコールでも薄めれば濃度は下がります.たとえば,汚染水の話をしている時に,Bq/kg (濃度)の話をしているのか,Bq の話をしているのかは注意が必要です.

次回はもう少し放射線量の話を続けたいと思います.

最終処分の話をしようや (7): 付録 1: リスクを自分で判断するための知識を理解しよう

付録 (やまうちメモ) について

注: 付録は全てやまうちメモ(記録者やまうちの調べたものや,やまうちの個人的意見)です.

この節の目的: リスクを自分で判断するための知識を理解しよう

放射能というのは放射線を出す能力のことです.と言ってもしばらく前までは私は放射能と放射線の違いもよくわかっていませんでした.そのような方のために,ここでは放射能と放射線の違いについてまとめておきたいと思います.

市民としては結局「安全かどうか」という部分に関心があるのですが,放射能の問題の難しいところは,即時に目に見えてはわからないところです.また,科学的な安全性の実験データが乏しいこともあります.本当に安全性を確かめるには,何千もの被験者を何年かに渡って様々な放射性の環境に起き,どのような条件が安全なのかを人体実験する必要があります.しかし,そのような実験を行うことは困難です.実際に実験できないとなると,当然専門家の意見も一定ではありません.すると安全性の議論はどこかのグレイゾーンで水掛け論に終わることも多く,建設的な議論とならない傾向があります.したがって,現在我々ができることは,まずは危険を避けることですが,それが難しい場合には自分でリスクを考え,どこまでならば良いのかを自分で判断することとなります.誰かの言うことを盲目的に信じた結果を我々は既に福島で見ました.しかし,自分で可能な限り判断する必要があるとしても,まずは問題が理解できなくては同じことになってしまいます.

ですからここでは安全に関しては政府などの出しているいくつかの資料を参考にすることにとどめます.しかし,その資料にでてくる言葉,例えばベクレルとは何か,などが理解できなくては判断をしようにもできません.そこでこの付録では,そのような言葉について簡単な解説をします.

つまりこの節の目的はそれぞれが自分でリスクについて判断するための基礎知識を得ることです.提供されている資料を読むことができるようにすることです.それはベクレルとはどういう意味か,放射能とは何かというような基礎的な知識です.まずはここから始めることにしましょう.

放射能・放射線などの言葉について必要な知識

まず放射線とは何かというのは,原子とは何かという話にかかわってきます.原子や分子というものは現代の社会を支える工業でも基本になっています.そのため,中学の理科や高校の物理,化学で習います.しかし,私は,原子や分子に関して習った時には,それが社会の根幹となる産業や電気などの毎日の生活と密接にかかわっていることなどは知りませんでした.あるいはピンと来なかったのです.あなたもそうかもしれません.また電気とは何かという話も原子に密接に関係しています.電気は毎日使っていると思いますが,「それは何か」とお子さんに尋ねられてちゃんと答えられるでしょうか? 中学などで習ってはいるのですが,私同様,忘れてしまっていて,今回の事故のようなことになってあわててしまった方は,今からでも調べてみると良いのではないかと思います.まずは知ることではないでしょうか.昔の教科書をひっぱり出してみるとか,その年代のお子さんがいらっしゃるご家庭でしたらお子さんに尋ねてみるとかもいいかと思います.あるいはインターネットには資料は多くあるのでご覧になるのもよいでしょう.

原子などについての科学的知識の資料としては Wikipedia の記事[1]からはじめるのも1つの手です.また,化学のオンライン授業を提供するサイトなどに原子の話があります.これらのサイトは原子力発電とは関係ありませんので安全性などについてはほとんど述べられていません.しかし,「放射線とは何か」などについては,初学者向けに比較的容易な解説があり参考になると思います.手前味噌ですが,化学の初学者向けの解説ビデオとして [2] を挙げておきます.ただし,これは中学から高校生向けの一般的な化学入門なので,もっと簡単なものが知りたいとか,その反対にもっと高いレベルのものが詳しく知りたいという方々は,御自身でいろいろと調べてみて下さい.

安全性については日本政府の官邸から「みなさまの安全確保[3]」のような資料があります.このページからいくつかの安全基準をみつけることができます.しかし,そこには「内部被曝1mSv/y の前提における飲料水の基準は 10Bq/kg [4]」のような記述になっています.この言葉についての解説も[3] からたどれます.それを自力でおわかり頂ける方はこれ以上この記事を読まれる必要はありません.しかし,これではどういうものかわからないという方のためにここではその意味について,私なりにまとめてみたいと思います.たとえば,シーベルト(Sv) とは何か,ベクレル(Bq) とは何か,なぜ Bq/kg という単位なのか,mSv/y と mSv の違いは何か,そもそもその違いは個人にとってどう重要なのか,などについてです.ただし,たとえ意味がわかっても,その値が本当に安全かどうかについての判断は困難です.それでもその知識で報道を見ると,意味不明ではなくなり,ずっと理解がすすむと思います.そして御自分で判断できる可能性も出てきます.

ここでは私は記述にできるだけ間違いのないように努力し,ここで書いていることの根拠となった資料への参照もできるだけ載せておきます.しかし,私は核物理学等は素人であり,間違いもあるかと思いますので,あまり鵜呑みにすることはなく,御自分でもお調べになって,納得されるようにお願いいたします.

次回

今回は安全性をできるだけ自分で判断するため,どのような資料があるかなどをみてきました.次回はもう少し具体的な話をしていきます.この資料を自分でお読みになるというのも良いと思いますが,なかなか難しい部分もあると思いますので読むための基礎知識を少し補足したいと思います.少なくともできるだけ誤解しないようにするための基礎的な技術的知識について考えていきます.高校生までの知識で十分理解できるものだと思いますので,何かの間違いを鵜呑みにして後で「こんなはずではなかった」ということにならないようにしたいと思います.自分の命だけではなく家族の命を考えたら,ちょっとした科学的知識を理解する勉強はしてもいいのではないかと思います.理解,つまり,分かることがが目的ですから,私の言っていることが間違いであれば,その間違いが分かるとすばらしいと思います.

参考文献

  1. Wikipedia Ja, 放射線, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A, (accessed 2014-12-26)
  2. 日本語版カーンアカデミー, 化学の基礎プレイリスト, https://www.youtube.com/playlist?list=PLhDDoRSjeQODO7kcf8hoqboFyuDY9uYJ7, (accessed 2014-12-26)
  3. 首相官邸, みなさまの安全確保 (http://www.kantei.go.jp/saigai/anzen.html/), 計画的避難区域」及び「緊急時避難準備区域」の設定について (http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110422004/20110422004-2.pdf), 2011, (accessed 2014-12-21) http://www.kantei.go.jp/saigai/20110411keikakuhinan.html
  4. 厚生労働省: 原子力被災者生活支援チーム, 原子力発電所外に適用されている放射能に関する主な指標例, http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/120427_01a.pdf, (accessed 2014-12-26)

最終処分の話をしようや (5): 最終処分の方法

前回は中間貯蔵について話をし,核燃料の放射能減衰のグラフを見て,中間貯蔵の想定している 30 年から50年という短期間では不足であることを見てきました.数万年以上の貯蔵,それが最終処分です.どのようなことが考えられているのでしょうか?

最終処分の方法

地層処分

最終処分の方法として現在現実的なものは地層処分です.驚きですが,以前は核廃棄物を海に捨てる,海洋投棄があったようです.しかし,環境を汚染する海洋投棄は今では国際的に禁止されています.現在では核廃棄物を地中深く掘って埋める地層処分が最も現実的な方法と考えられています.

地層処分では放射線を以下の2つの方法で遮蔽します.

  • 人工バリア: 容器,コンクリート
  • 自然バリア: 地層

このうち,遮蔽効果のほとんどは地中深く埋める自然バリアによってもたらされます.

廃棄物のレベルと国によってどれだけ深く埋めるかには次のような分類があり,異なっています.

  • 低中レベル放射性廃棄物
    • 浅層 (数百メートルの深度(日本等))
    • 中層
    • 深層 (1000m 前後 (ドイツ等))
  • 高レベル放射性廃棄物(+TRU廃棄物)
    • 深層処理

高レベル放射性廃棄物の地層としては次のような候補があり,それぞれ特徴があります.

  • 粘土層:
    • 欠点: 熱伝導率が低く,熱が逃げないので,地層が高レベル放射性廃棄物の熱で乾燥して亀裂が入り,汚染が漏れる危険がある.
  • 花崗岩層:
    • 欠点: 岩盤が硬いので掘るのに莫大なコストがかかる上,地層に地下水がある可能性があり,地下水によって汚染が拡散される.
  • 岩塩層:
    • 利点: 熱伝導率が高く,熱を逃がしやすいので.高レベル放射性廃棄物の熱が拡散される.
    • 欠点: 過去海だったため,どこかに水がある可能性が高く,水によって汚染が拡散される危険がある.

最終処分の地層としては廃棄物を長期間安定に保存するために,以下の条件が求められます.

  • 地層が均一である (均一であれば亀裂などがない,または起こりにくい)
  • 地下水が流れこまない (地下水によって汚染が拡散してしまう可能性がある)
  • 地層の移動がない (移動があると廃棄物が安定して保存されない)

地下水が流れているとか,亀裂があるなどとなると,長期間の保存では保存している核廃棄物が環境を汚染する可能性があります.そのため水(地下水)の有無は重要な条件になります.

最終処分場の事例

地層処分とは,地上から2本の竪坑を掘って,地下に坑道を作って最終処分に適した地層に放射性廃棄物を保管できるようにすることです.

図 4 は,東ドイツ時代にモアスレーベン(Morsleben)で建設,使用されていた低中レベル放射性廃棄物の最終処分場です.地下に壮大な貯蔵場が必要なことがわかります.なお,モアスレーベンの最終処分場は岩塩層が落盤する危険があることから,使用を中断し,閉鎖されることが決定されました.morsleben_1511_3

図 4.写真: 独モアスレーベンの最終処分場構造図 (写真提供: ふくもと氏)

ドイツのゴアレーベン(Gorlben)は当初,放射性廃棄物の総合処理場にする計画がありました.まず,中央中間貯蔵施設が設置されました.そのうちに,そこに最終処分場を設置する目的でその地下岩塩層が高レベル放射性廃棄物に適するかどうかの調査施設が建設されました.ただ,その適性には疑問もあり,これまで調査を中断したり,再開するなどを繰り返してきました.現在は最終処分場の候補地を白紙に戻して,最終処分地を選定するための委員会が国会内に設置されています.gorlben_DSC_0018

図 5.写真: 地層内にある油 (独ゴアレーベン) (写真提供: ふくもと氏)

図 5 は,ゴアレーベン地下調査坑道内の地層の写真です.黒い部分は油のある層で,岩塩層が均一でないことがわかります.

次回

ここまでで最終処分の方法についてみてきました.実際の最終処分場はまだ世界にはほとんどありません.しかし核のゴミは既に存在し,増え続けています.我々の世代はこの負担をしなくてはいけません.でなければ危険なものが処理されずに存在することになります.実際にはどこかにほおっておくという手もありますが,負担そのものはなくなりません.やまうち個人としてはこのほおっておく,放置する,という形の負担はしたくありません.なぜなら,そちらの方が結局もっと高くつくためです.どうせ負担しなくてはいけないのなら安くして欲しいのです.放置しておくという解答は,それで死人が出たり病人が出たり,国土が汚染され利用できなくなるという形での負担になるからです.この負担はどのようになっているのでしょうか? 次回は最終処分の資金についてのお話です.

最終処分の話をしようや (4): 最終処分とは? 放射性廃棄物と放射能減衰の推移

前回は放射性廃棄物を安全になるまで長期間保存する前段階として 30年から 50年程度の短期間の貯蔵,中間貯蔵があるという話をしました.今回はそのお話です.

放射性廃棄物とその中間貯蔵までのまとめ

ここまでで最終処分の対象とする放射性廃棄物とはどのようなものか,放射性廃棄物はどのように発生するのか,最終処分の前までに,どのように処理をするのかの現状について概要を見てきました.現在ではコストなども考えた実用的な核種変換技術がないために,放射性廃棄物を長期間保存する方法が現実的と考えられています.次節では,その放射性廃棄物の特性についてもう少し詳しく見ていきます.それを知ることで最終処分の課題が見えてくるでしょう.

使用済み核燃料の放射能減衰の推移

放射能減衰の推移グラフ

使用済みの核燃料は,原子炉から取り出された時には高い放射能を持っているために,これを保管して放射能が落ちるのを待つ必要があります.勉強会ではここで放射能減衰の推移グラフが示され,減衰には長期間かかることが示されました.

やまうちメモ

使用済みの核燃料は,いつまでこれを保管する必要があるのかが問題になります.使用済みの核燃料が数ヶ月程度で安全なレベルにまでなるのであれば,最終処分もおそらくあまり問題はないのですが,そういうわけにはいきません. 次の図は使用済み核燃料の放射能減衰の時間推移を示しているものです.これは一般財団法人高度情報科学技術研究機構の資料[1]でみつけたもので,核燃料サイクル開発機構の資料が出典となっています.

radioactive_timeline_2図 3. ガラス固化体の放射能の時間的推移

図 3.の読み方:

まずはこのグラフの読み方をみていきましょう.グラフが両対数のグラフになっていることに注意して下さい.とは言ってもまず,両対数グラフとは何かの話をしたいと思います.それは縦軸も横軸も指数となっているようなグラフで普通のグラフとはちょっと違います.よく見慣れたグラフでは,1目盛り進むと +1 増えますが,ここにあるグラフではたし算ではなくかけ算で,1目盛り進むと 10 倍になります.つまり,2目盛り進むと 100 倍になるグラフです. 縦の軸ですが,核燃料を取り出した直後には核燃料 1 トンに相当する放射能がベクレル値で 1010 GBq となっています.1010 とは 1 の後に 0 が10 個つくという意味ですから,10000000000,つまり 100 億のことです.そして単位の Bq の前にある G というのはギガという単位につく補助の接頭辞で,109を示します.コンピュータに少し詳しい方であれば,GByte が,MByte の1000倍ということをご存知でしょう.するとこれは10億であることもご存知かもしれません.すると,1010 GBqというのは,100億ギガベクレルで,10000000000000000000 Bq,つまり,1000京ベクレルのことです. 政府の基準では,核種や食品にもよりますが,目安として食品は 1 kg あたり100 ベクレル以上のものは摂取しない方が良いということですから,核燃料を取り出した直後のベクレル値は,私には想像すら難しいレベルです. そして横軸にはほぼ中心に核燃料を使用しはじめた時点の 0 があります.右側に行くと時間が経過しています.ここで,軸の目盛りをみると,100年, 102年,104年, 106年,108年,と続いています.10 の指数の数は先程の GBqの時と同じく,0 がいくつ1の後に続くかと同じことですから,100年は 1 年,102年は 100年, 104年は 10000年(1万年),106年は100万年,108年は1億年の意味です. グラフをみると横に青の点線が引かれています.これが「ウラン鉱物として地質環境に賦存」と書かれている時の放射能を示している線です.赤の線がこの線を横切るのにかかる年月は,104 と 105 の間あたりですから,1万年から10万年の間ということが読み取れます.これでグラフの読み方がおわかりになると,嬉しいです. ところで,上記で数字の 100 と 1000京を比較するのは公平ではありません.食品は 1kg あたりの Bq で核燃料の場合には 1t あたりの Bq ですから,核燃料の方が数字が大きくなります.1t は 1000kg ですから,100 と 1京 の比較が公平です.こうやって数字を 1000 倍違うように見てしまうこともあります.報道でも,時々このように単位をそろえていないことがあります.ただし,普通,単位は言っているので間違いではありません.(しかし単位をそろえても 100 と 1 京はとても違います.) こういうとても大きさの異なる数を,指数を使って 0 がいくつつくのかということで示す方法を科学的表記法と言います.この場合 100 は 1 の後に 2 個の 0 があるので,102, 1 京(10000000000000000) は 1 の後に 0 が 16 個つくので,1016 です.(どうです? 指数は便利でしょう) 単位を変化させて表現にインパクトを与えるのは広告では普通にあります.たとえば,広告では○○ 1000 mgなどと言いますが,それは○○ 1gと同じです.広告の戦略としては 1000 という数の方が 1 よりもずっとインパクトがあるので正しいですし,何も間違いではありません.それならば,○○ 100万マイクログラムと言うこともできます.これも 1g のことで何も変わっていませんが,100万までいくと怪しくなるので 1000 mg を考えた人は広告の才能があるなと思います.広告の場合にはまったく問題はないと思いますが,放射能汚染などの数値の報道では,単位には少し気をつかって欲しいと思います.

使用済み核燃料はいつまで保管しなくてはいけないか

先の図 3 ですが,Web 上を探すと一般財団法人高度情報科学技術研究機構以外にも似たような図がみつかります.ただ,後で私は気がついたのですが,この図が示すのは,ウラン鉱を採鉱した時点まで放射能が下がる時間が数万年単位ということであって,ウラン鉱を採鉱した時点での放射能の強さが危険なのか安全なのかについてとは関係がありません.この図を見せて頂いて,時間がかかるんだなあ,という印象を持ちました.しかし,勉強会の後にふと思ったのは,ではその数万年を越えたら安全なのか? ということです. 図3では青い点線は燃料 1トンあたり 1000 GBq 相当,つまり 1GBq/t (=10億ベクレル/t) を示します.考えてみればギガベクレルというのはかなり大きな値です.相当する放射能という言葉がどのような定義かに疑問がありますが,それを置いておくことにして 1kg に換算すると MBq/kg ですから,100万ベクレル/kg です.日本でのいくつかの食品の安全基準は,100 ベクレル/kg 以下というので,その1万倍というのはかなり大きな値のように思います. 結局青の点線以下になれば,人間が近付けるのかどうかなどは私にはわかりません.やはりどうしても安全かどうかということに関心があるので,何か図をみたらそう判断できないかと考えてしまうのが悪いのかもしれません.そのような意味では,この図は単に燃料を作った時と同じレベルの放射能の強さにかかる時間がどの位かということ示しているだけである,安全性とは関係はない,と考えるのが良いかと思います.

放射能減衰の推移と対処

図 3 から,核燃料を取り出した際の放射能は 100億GBq/t,それを3〜5年の燃料貯蔵プールで冷却した後には,数千万 GBq/t,その後ガラス固化体として 30〜50 年の中間貯蔵後には 1千万 GBq/t を少し下回るレベルになっています.これが天然にあるウラン鉱石の放射能レベルの線,1000GBq/t となるまでにはさらに数万年が必要です.この中間貯蔵以降の保管が最終処分となりますので,次回にその方法を見ていきましょう.

次回

次回はようやく最終処分の方法についてみていきます.数万年を越える期間何かを保存するというのは私には気が遠くなる話です.そもそもそのようなことはできるのでしょうか?

参考文献

  1. 高度情報科学技術研究機構, 高レベル放射性廃棄物と処分対策の安全問題, ガラス固化体の放射能の推移の図表を参照,  (http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=05-01-01-03 ), accessed 2015-7-1

最終処分の話をしようや (3): 最終処分とは? 放射性廃棄物の処分方法

前回は放射性廃棄物は何かの話をしました.今回はその処分の方法についてのお話です.

放射性廃棄物を処分する手順

現在,まだ放射性廃棄物に含まれる放射性物質を無害化する実用化された技術はありません.そのため,放射性物質が減衰して放射能濃度が下がるのを待つしかありません.ですから,放射性廃棄物を最終処分場に長期間保管して,人体や周辺の環境にできるだけ影響のないようにします. 廃棄物のうち,低中レベル放射性廃棄物は熱を発生しないので,基本的にはすぐに最終処分が可能です.しかし,次の理由から現状では一時的に中間貯蔵しています:

  • 最終処分場がない (例: 日本をはじめとしてほとんどの原発立地国)
  • 最終処分場があっても順番がくるまで時間がかかる

高レベル放射性廃棄物は高温の熱を発しているので,まずそれを冷却しなければなりません.そのため,中間貯蔵施設に保管して冷えるのを待ちます.高レベル放射能廃棄物である使用済み核燃料は,まず原子建屋内にある燃料貯蔵プールで通常3〜5年間冷却します.次に,中間貯蔵施設に30年から50年保管して十分に冷えたら,最終処分します.この中間貯蔵についてもどこで,どう保管するかの問題があります. また,ごくわずかですが,日本など使用済み核燃料を再処理している国もあります.その場合は,使用済み核燃料を原子炉建屋内の燃料貯蔵プールに保管した後,再処理施設に送るまで原発サイト内の貯蔵プールに保管します.日本の場合ここまでで約 10 年をかけます.再処理の際に出る廃液などは,高温で溶かしたガラス成分と一緒にキャニスタという容器にいれ,ガラス固化体とします. 中間貯蔵では,原発サイト内毎に分散して保管するか,数ヵ所にまとめて保管します.ドイツの場合は現在,使用済み核燃料はサイト内で分散保管,ガラス固化体は一ヶ所で中央保管しています. 保管する方法には,貯蔵プールに直接入れて水で冷却しながら保管する方法(プール式)と,保管容器に入れて地上の倉庫で空気で冷やしながら保管する方法(乾式)があります.水を使うプール方式は比較的場所をとらず,特別な容器も必要ないので,その分コストを低くできるという利点はありますが,地震などでプールに亀裂ができて水が漏れてしまうと,空焚きになってしまう危険があります. 乾式では自然に空気だけで冷却するのでこのような問題は回避できますが,中性子線を周辺の環境に放出している危険があります.日本は地震が多いにもかかわらず,貯蔵プール方式を採用しています.ですから,たとえ原子炉がすべて停止していても,日本には常に地震によって大惨事が起きる危険があることになります. ドイツは乾式を採用しています.ドイツの例はゴアレーベンにあります.勉強会ではゴアレーベンの映像を拝見しました.キャスクと呼ばれる排熱フィンのついた保管容器を貯蔵施設内に立ててある様子がありました. どちらの方式にせよこの中間貯蔵所で30年から50年冷却された後,最終処分がなされます.この手順を次の図 3にまとめます.flow_process_ja

図 3. 使用済み核燃料の処分の流れ

やまうちメモ

ガラス固化体についての補足:

ガラス固化体は製造直後は人間が近くにいれば20秒で死亡するという高い放射線を発しており,表面温度は200度C を越えます.(電気事業連合会のホームページより[1]) これも中間貯蔵して30年から50年間冷却します.再処理でのプルトニウムは MOX燃料とする.または核燃料サイクルで利用するという研究がこれまで40年間以上続けられてきていますが,こちらの計画の見通しは現在はまだたっていないようです[2]

核種変換技術についての補足:

核種変換の技術というと名前はなかなか難しいのですが,原子核の種類を変更するという技術です.核分裂の技術はその一種です.これが自由にできるとなると原子の種類が変更できるすごい技術で,人類はこの技術を数千年も追い求めて,化学という分野を作りました.たとえば,鉛を金に変換する技術も核種変換技術ですが,しかし,まだ大量の放射性廃棄物を実用的に処理できる技術はないようです.日本ではオメガ計画[3]というプロジェクトがあります.


次回

放射性廃棄物は基本的には長期間保存して放射線が弱くなるのを待つ以外には安全にする決め手がないようです.次回はその第一段階,(最終の前の)中間貯蔵についてです.

参考文献

  1. 電気事業連合会, 原子力発電について: ガラス固化体, 2014, (accessed 2014-12-21(Sun))
  2. 東京新聞, 45年で10兆円投入.核燃サイクル事業めどなく, (accessed 2014-10-04)
  3. Wikipedia ja, オメガ計画, , (accessed 2015-3-28)

最終処分の話をしようや (2): 最終処分とは? 放射性廃棄物とは?

最終処分とは

最終処分は,放射性廃棄物を周辺の環境や人体に影響のないように放射性廃棄物の毒性が低下するまで管理,保管することです.まず,放射性廃棄物の種類とそれがどこからでてくるのかについて話し,そしてどのようにそれを処分するのかについて話をしていきます.

放射性廃棄物について

それが放射性廃棄物かどうかを決める基準として,クリアランス制度があります.それは特定の測定条件で 10 mSv/y の線量当量を越えるかどうかで決まります.この条件を越えるものが放射性廃棄物とされます.またその枠内で,放射性核種毎に基準値(ベクレル値)が決められています. ここで勉強会では 10mSv/y 以上かどうかで廃棄物としては決まるのに,それにまた放射性核種毎に基準値があるというのは,基準がいくつもあるという意味か?という質問がありました.放射能核種毎の基準というのは,放射能核種の濃度を示すものであって,人に対する影響を示す指標となる線量値ではありません.年間線量 10 mSv/yの枠内で,規定された核種毎にそれぞれの放射能濃度が規制されているということです.そして,その基準を超える核種が一つでもあると,それは放射性廃棄物として取り扱われます.ただし,この説明は素人にはなかなか難しいと思います.クリアランス制度の基準によって,放射性廃棄物かどうかが判断され,その基準以下のものは市場でリサイクルも可能ということが1つのポイントです.

やまうちメモ

やまうちは原子力発電所から出てきて,放射線を出すものは全て放射性廃棄物であると誤解していました.この放射性廃棄物かどうかの基準値そのものの意味,つまり,放射能の単位のベクレルと放射線量の単位のシーベルト,また放射能と放射線の違いについて別枠にやまうちが調べたことを豆知識としてまとめておきます(FIXME: 後の記事が up されたらここからリンクを作成).


放射性廃棄物の分類

放射性廃棄物は,以下の3つに分類されます.

  • 高レベル (TRU廃棄物,使用済み核燃料など)
  • 中レベル (あまりこの種の廃棄物はない)
  • 低レベル

ドイツでは最終処分の都合から,基本的に熱を発生するかどうかで決めています.TRU廃棄物というのはウランの原子番号を越える超ウラン(TRans-Uranium)元素で,主に原子炉を稼動すると生成されるものです.

放射性廃棄物の発生源

高レベル放射性廃棄物(+TRU廃棄物)の発生源は

  • 使用済み核燃料
  • 再処理によって発生する廃液 (ガラス固化体)

などがあります. 低・中レベル放射性廃棄物の発生源には以下のようなものがあります.

  • 原子力発電所
  • 廃炉作業
  • 核燃料加工工場
  • 使用済み核燃料再処理施設
  • (ウラン鉱山,濃縮工場)(採鉱現地)
  • 医療機関
  • 産業工場
  • 研究開発機関,その他

原子力発電所は稼働中か停止中かにかかわりなく,保守作業をすると放射性廃棄物が排出されます.作業員の服などがそうです.医療や産業界でも,放射性物質が使用されるので,そこからも発生します. ドイツでは,すべての放射性廃棄物が危険物扱いとして規制,管理されていますが,日本では上記のリストの下 3 項目はまだ規制されていません.ですから,いつ,どこで,どう輸送され,保管されているのかはよくわからないということです.

やまうちメモ

やまうち個人の意見になりますが,できれば下3項目の放射性物質も,日本でもドイツ同様に危険物として何らかの管理体制を入れて欲しいと思います. また,クリアランス制度で 10mSv/y が放射性廃棄物になるか,普通にリサイクルして良いのかの基準でしたが,これが安全かどうかということはよくわからないことも個人的には注意すべきだと思いました.9.9mSv/y の鉄がリサイクルされて建物や家電に使用されてもこの基準からすれば合法です.実際,「鉄 放射線 スクラップ」などで検索するといくつかのニュースがみつかりますが,それらの中には合法とされるものもあるはずです.今回の記事ではこのクリアランス制度の基準の安全性については調査不足ですが,基準を通って市場に出てくるものはあるということは注意しておきたいと思います.


次回

今回は放射性廃棄物というものがどのような基準で決められているのかについて考えました.次回は放射性廃棄物とされたものはどのように処分されるのかの現状について考えていきたいと思います.

最終処分の話をしようや (1): 核のゴミの現状: なぜ最終処分の話なのでしょうか?

なぜ最終処分の話なのでしょうか

前回の勉強会,「廃炉の話をしようや 」で廃炉の後には放射性廃棄物が残ることがわかりました.しかし,その勉強会では私達はこの廃棄物をどうするのかという話については伺いませんでした.事故,あるいは寿命の尽きた原子炉をどうするのかというのが廃炉の話であり,廃炉には費用(一例: 1基1000億円)と時間(一例: 30年)がかかりますが,その後にまだ核のゴミが残る,というところで前回の勉強会は終わりました.こうなるとその核のゴミをどう処分するかという「最終処分」の話を聞きたくなります. 元々,SNB (Sayonara Nukes Berlin) のメンバーの一部からは両方の話を聞きたいという要望があったのですが,1回 2 時間半という枠で両方の話をするのは難しいということでした.そのためにまずは廃炉の話ということになりました.廃炉の勉強会の後,結局最終処分についても伺いたいという要望があり,今回の最終処分についての勉強会となりました.今回も前回に引き続き,ふくもとさんを講師としてお迎えしての勉強会になりました.以下の写真(図 1)が今回の様子です.(この勉強会は 2014年の11月15日に行なわれました.)

meeting_20141115図 1.「最終処分の話をしようや」勉強会の様子 (2014-11-15)

前回と同じく,このメモはその勉強会での記録を記録者の私が理解したようにまとめたものです.この記録は廃炉の話がわかっているとよりわかりやすいと思います.それは前回の記録をご覧下さい.また,講師のふくもとさんについての紹介なども前回の記録を御参照下さい. また,この記録はふくもとさんの説明やご意見を聞き,それについてこの記録者のやまうちが感想を述べたり,独自に調べた部分があります.記録者の考えの部分は,「やまうちメモ」のタイトルがついて別の節になっています.それは記録者のやまうちの感想であってふくもとさんの意見ではないことにご注意してお読み頂ければと思います.またこの文書の文責は記録者のやまうちにあります.

はじめに

前回,ふくもとさんはエネルギー問題について,「市民としてできることを考える」ことの重要さについて述べました.それについては前回の記録にもありますが,1つ補足しておきたいことを述べられました.それは次のようなものです.

福島原発事故の後に停電して,それが原発が止まっているからだと電力会社にいわれたら,その時それでも原発に反対できますか.そういうことを一度考えてほしい.

まずは考えて意見を持つことの重要さについて述べられていました.そのために情報を探し自分で理解することが重要であり,その結果,原発について反対するのもよし,賛成するのもよし,どちらにせよできるだけ正しい情報に基いて個々が考えて議論をするべきであるということです.

やまうちメモ

これは最初のやまうちメモです.最初に述べたように,やまうちメモは報告者のやまうちが勉強会に触発されて後で調べたことや,やまうちの個人的な感想,意見を書くところです. 私達が現状をどう考えるか,私達の未来をどう考えるのか,それは結局選挙で見られる民意によるものです.私もこの話を伺って考えました. 私の考えたことは,たとえば,原発のある未来が私の欲しい未来なのだろうかどうか.そして,電気が足りていないと言われたから原発に賛成し,足りているとわかったら反対,というものでいいのだろうか? でした.そこにはまず未来へのビジョンがあるべきです.現状との妥協はあるとしても,一人一人にできることを考えていくことをしなくては,未来に進んでいくのはできないのではないかということでした.来年やさらなる未来だけではなく,明日のことも大事です.しかし未来は明日の積み重ねです.未来を見て明日を妥協するのか,明日がなければ未来はないのだから,明日だけをまず考えるべきという考えもあるでしょう.難しい問題だと思いますが,時には立ち止まる必要があると私は思います.なぜなら私達,そして私達の子孫はその未来を生きることになるはずからです.これは私個人の意見ですが,今が良ければ,私達や,私達の子達の未来はどうでも良いという考えには私は賛成できません. 技術的には様々な可能性があります.電気を使わないというような極端な考えはなかなか受け入れにくいものかもしれません.しかし,自然エネルギーと水素生成の組み合せで,太陽光のように時間に依存するエネルギーも安定供給源となるような方法が可能かもしれません.しかもコストも含めた方法が技術開発によって将来可能になるかもしれません.その道を開くことも未来を考える1つの方法でしょう.それのような技術を将来海外へと輸出して国益とするということも考えに入れても良いかもしれません. 政治的にも様々な可能性があります.ドイツのように原発の電気は買いたくない人にはその道を,同様に原発の電気だけを買いたい人にもそうする道を開くのも1つです.どちらの考えであっても消費者の欲しいものが提供されていないことは問題で,これは選挙を含めた様々な方法によって市民から働きかけることができるものです. 結局,賛成派であっても反対派であっても自分で現状を判断して自分の未来についての自分の意見を考える必要があると思います.そのためにも地道,つまり退屈なことになりがちと思いますが,私も少しづつ現状を理解して考えていきたいと思います.この記録が少しでもその考える際の参考になることを願います.


次回

次回は最終処分とはどういうものか,放射性廃棄物とは何なのかについて考えていきたいと思います.